• 2015/09/28
  • Edit by HARUMA YONEKAWA
  • Photo by TOYOAKI MASUDA

コクリ!ラボ・インタビュー(2)長友まさ美さん ラボがあるから、地域の活動にコミットし続けられる

「宮崎てげてげPRチーム」のまぁちゃん(長友まさ美さん)のインタビューをとおしてご紹介します。

2015年6月2~4日に、第7回コクリ!ラボを開催しました。今回は、初の試みとして2日目に「オープンデイ」を設け、企業、国、NPO、大学、クリエイターなど知恵・リソースをもつ「追い風パートナー」の皆さんにも参加していただき、ラボメンバーのアイデアや問いに多様な角度からアドバイス、答え、感想などをお寄せいただきました。具体的にどのような場だったのか、「宮崎てげてげPRチーム」のまぁちゃん(長友まさ美さん)のインタビューをとおしてご紹介します。

ラボに集まる人たちは、地域の未来、
日本の未来を本気でよくしたいと考えている

―― まずは自己紹介を簡単にお願いします。

「サンワード・ラボ」という会社を経営していて、企業研修、コーチング、チームビルディングなどを行っています。また、宮崎の魅力を発信する非営利情報サイト「宮崎てげてげ通信(テゲツー!)」の会長という顔もあり、コクリ!ラボには「宮崎てげてげPRチーム」として宮崎の魅力を伝える仲間たちと一緒に参加しています。

まぁちゃん(長友まさ美さん)/サンワード・ラボ株式会社 代表取締役

コクリ!ラボに参加したのは、第2回から。以前、愛ちゃん(三田愛さん)と一緒にコーチングを学んだ縁で、愛ちゃんに誘ってもらいました。ちょうどテゲツー!を立ち上げたばかりで、「もっと宮崎を盛り上げたい!」という想いだけが先走っていて、何をどう貢献していいのかさっぱり分からずに悩んでいた頃のこと。そんな私にとって、地域の未来、日本の未来を本気で考えている実践者の皆さんが全国から集まり、肩書きを外して対等に話しているコクリ!ラボは、本当にステキに見えた。きっとここから得るものがたくさんあるだろうと思い、宮崎の大好きな仲間たちを誘いながらずっと参加しています。

「どうしたらPV数を上げられる?」から
「どうしたら突き抜けられる?」に、オープンデイで問いが変わった

テーマ出しは早い者勝ち。9人が、いま解決したいと強く願う課題を持ち寄りました

―― 第7回ラボの「オープンデイ」は、いかがでしたか?

オープンデイ…「フィールド・課題をもつ地域」と「知恵・リソースをもつ追い風パートナー」のコ・クリエーションの場。今回は「プロアクション・カフェ」の手法を使い、地域が中心となって9つのテーマを出して、それに対して、追い風パートナーの皆さんにさまざまなアドバイスやコメントを寄せていただきました。各チームとも、宮崎てげてげPRチームに負けず劣らず、数多くのヒントやリソースを獲得したようです。
テーマに興味を持った「追い風パートナー」が集い、それぞれのテーブルで対話

宮崎てげてげPRチームは、「チャレンジする文化づくりを、より大きなうねりにするには?」というテーマを掲げて、追い風パートナーの皆さんにご意見をいただきました。いま、私たちはテゲツー!の他に、まちづくりに興味のある若者を育成する「宮崎ワケモン会議」、起業家支援の「宮崎スタートアップバレー(ミヤバレー)」といった取り組みを始めています。この3つを軌道に乗せる第一歩として、「テゲツー!を今年中に月間100万PVを超えるWebサイトにする!」「ミヤバレーで、2020年までに100人のチャレンジャーを生む!」という具体的な目標を立てていたので、達成するためのヒントをいただけたらと想定していました。

多様な見方のなかから、思わぬヒントが生まれます

追い風パートナーの皆さんは、それぞれまったく違うバックグラウンドをもっていて、もっと深く話してみたい方ばかり。そんな彼らに宮崎のことを知ってもらえたのが嬉しかったですし、感じたことを率直に語ってもらうだけで、多くの学びや気づきがありました。例えば、「PV数より、“宮崎で面白いことをやっている人たちがいる”という驚きやインパクトのほうが大事では。テゲツー!が突き抜けていれば、PV数は絶対についてくると思います」とおっしゃったのは、シブヤ大学の榎本さん(榎本善晃さん)。この榎本さんの言葉によって、「月間100万PVのためにはどうしたらよい?」から「日本のローカルメディアで突き抜けるためにはどうしたらよい?」へと、私たちの問いと目標が大きく変わりました。

オープンデイの最後は、各テーマの成果を共有。それぞれ得るものは多かった様子

別の方には、「長友さんは宮崎をどう変えていきたいのですか?」と聞かれたので、「誰もがその人らしく幸せに生きられる場所にしたいんです」と答えたら、「その言葉はフワッとしていて、あまり伝わらないと思います。もっと具体的にしたほうがいい」と言われました。それ以来、「その人らしく幸せに生きる」とはどういうことなのか考え続けています。例えば、宮崎で豊かに暮らす人を増やしたいと移住促進を思っていますが、誰もがいきなり移住できるわけじゃない。帰省の回数、遊びに来る回数が増えたり、接点やつながりができるだけでも十分。宮崎との関わり方を模索してもらうことが一番大切で、関わり方はいろいろあっていいんです。いま、「宮崎をどう変えていきたい?」と質問されたら、「人と人をつなげ、宮崎に新たな価値を創造していきたい」と答えます。

テゲツー!はいま、失敗してもネタになるくらいの大きな挑戦を続け、突き抜けていこうと画策している最中。チャレンジしやすい文化をつくるには、私たちがチャレンジし続ける姿勢を見せなくてはいけないと思っています。そのためにも、新たなコンテンツとして、魅力的に見える「テゲツー!求人」や、住みたくなりイメージがわく「テゲツー!不動産」などを増やし人と人をつなげて、経済的にも非経済的にも豊かな価値を生みだしていきます。オープンデイで得た刺激が、これらのビジネスを動かしていくガソリンになっています。

自分たちの場所がある丹波や黒川の取組みが素晴らしい。 テゲツー!でも、いずれリアルな場を持ちたい

―― 1・2日目の地域ストーリーテリングで印象に残っていることは?

地域ストーリーテリング…各地域チームが、自らの「成功体験」「課題」「今後の仕事」などを語り、対話を交わし、次の一歩を踏み出す定番の時間。今回は1日目・2日目に、上天草、宮崎、黒川・南小国、丹波、京都、富山・氷見、雪国観光圏、高知、小布施、塩尻の方々がストーリーテリングを行いました。各地域のチャレンジ、悩み、考え方などから学ぶことが多いため、ラボメンバーはいつも耳を澄ましてストーリーに聞き入り、鋭い質問をいくつも投げかけます。その真剣さは、世界で数多くのコミュニティを見てきているアドバイザーのボブさん(ボブ・スティルガーさん)が驚くほどです。
コクリ!ラボは、基本的には和やかな雰囲気で進んでいきます

たくさんありますが、例えば、丹波チームの発表で、井口さん(井口元さん)が「みんなの家」というシェアハウスを拠点に「丹波キワモノ会議」などを実践しているのを見て、正直、かなり羨ましかった。黒川も古民家を改装して、人が集まる場づくりをスタートしています。テゲツー!でも、いずれはリアルな場をもちたいと思っています。

それぞれの地域の現状と課題を、1チームずつストーリーテリング

高知チームの東さん(東日出雄さん)が四万十で、廃校になった小学校の校舎を地域のコ・クリエーション拠点にしたいと一人でコツコツ掃除していたら、住民の方々が少しずつ集まり始めて、地域に変化が生まれてきたという話には感銘を受けました。やり続けることの大切さが本当によく分かるエピソード。テゲツー!は、いまや情報を出せばすぐに全国から見てもらえるわけで、ずいぶんありがたい環境にあります。この恵まれた環境を使って、伝え続けていきたいという想いが強まりました。

地域ストーリーテリングの合間合間に、数人ずつで「気づきや問い」を対話

小布施の大宮くん(大宮透さん)が、小布施町長の側で働けるのが面白そうだと感じて小布施で働き始めたというストーリーも印象に残っています。テゲツー!求人では、お金以外の惹かれるポイントや一緒に働く人たちの魅力を丁寧に取材して、大宮くんのような優秀な人たちが宮崎にきてもらえるような記事を創っていきたいです。

最後には、地域ストーリーテリングで得た気づき・問いを皆で共有します

「他の地域のために何ができるか?」
山ちゃんの姿勢に、新たな視点を学んだ

OSTでは、フロアのさまざまな場所に散らばって、テーマごとに話し合います

―― 3日目はどうでしたか。

プチOST…3日目は、2日目のオープンデイを受け、コクリ!ラボそのものを今後どのように展開していくか、小規模の「OST」でいくつかのテーマを出し合って対話しました。テーマは以下のとおり。「ラボはこのままじゃダメなの?」「私ができること」「自然農法ラボ連想ゲーム」「20年後から振り返って、いま私たちができたことを考える」「越境してやってみたいテーマは?」「コクリ京都場所の企画」「ラボの2016年6月4日をイメージする」「ラボ2nd Stage に必要なことは?」
塩尻の山ちゃん(山田崇さん)と愛ちゃん(三田愛さん)。ラボはいつも笑いが絶えない時間

塩尻の山ちゃん(山田崇さん)の「コクリ!ラボからもらってばかりはイヤ。自分はここで何がgiveできるかを追求したい」という姿勢は見習いたいと思いました。実は、山ちゃんには先日宮崎に来てもらったのですが、本当にいつどこで誰と話していても、何をgiveできるかを常に考えていました。だから、山ちゃんは多くの人を惹きつけるんです。これまで私は、自分が他の地域に何ができるかという視点をあまり明確にもっていませんでしたが、今後は、ラボはもちろんのこと、他の場面でもできる限りgiveしていきたい。そうすれば、結果的にもっとたくさんの豊かなつながりを生むことができると感じました。

対話が深まっていくと、皆がどんどん真剣になっていくのが分かります

―― 最後のチェックアウト(全員が輪になって一言コメントする時間)で、「結果にコミットします」と言っていましたが、あれはどういう意味ですか?

テゲツー!を、「自分たちが楽しいからやっている」で終わりにしないという意味です。これから先は、生み出す価値にこだわっていきたいし、経済的にもしっかり利益を生み出せるようにしたい。そのために、ラボやキャンプなどで得たリソースやつながりを最大限に活かしたいと思っています。地域メディアの数は、どんどん増えてきています。早く突き抜けて、名実共に日本一のローカルメディアになりたい。とはいえ、メディアはあくまでも自分たちの住む宮崎を豊かにしていくための手段の一つ。場合によっては、メディアを飛び越えてもいいから、もっと前のめりに、なりふりかまわず突き進もうという意志を込めた言葉でした。

最後は、一人ひとりが「これから挑戦したいこと」を発表しました

地域には、もっと力を発揮できるのに
発揮していない人がたくさんいる

―― コクリ!ラボから、他にどのような影響を受けていますか。

ラボメンバーが宮崎に来て、応援してくれるのは嬉しいことです。「宮崎ワケモン会議」には大宮くん、ゆうちゃん(北里有紀さん)、てっちゃん(橋本哲典さん)、きくちゃん(菊野陽子さん)、かずくん(中村一浩さん)が参加してくれましたし、別の機会では総務省の太田さん(太田直樹さん)も来てくださいました。先ほども触れましたが、今回のラボやオープンデイをきっかけに、山ちゃんには私たちが開催する「テゲツー!寺子屋」でトークイベントを開催しましたし、greenzの小野さん(小野裕之さん)にもお声がけしています。

振り返ってみると、もしラボがなかったら、私は今ごろもっと低い視点で物事を考えていたことでしょう。こんなにも宮崎の魅力を届けることも、他の地域と知恵を共有したい、他の地域とつながって面白いことをしたいとも考えなかったはずです。コクリ!ラボは、思考の壁を取っ払ってくれ、可能性を無限に広げて考えられるところです。また、本気で100年後の未来を考えて取り組む実践者たちばかりなので、自分自身もどんなしんどいことがあっても活動を続けることができています。こんなありがたい場に呼んでくれた愛ちゃんには、本当に感謝しています。

会社員時代は3年後がどこで何をやっているのか分からないことが不安でしたが、いまは将来が分からないことが楽しみです。新たな場に飛び込み、未知の人々と出会って何かが生まれ、大きくなっていくプロセスに期待が膨らむばかり。その面白さを教えてくれた場の一つが、コクリ!ラボでした。

また、地域の先代が紡いできたもの、積み上げてきたものの貴さを知ったのもラボでした。第4回コクリ!ラボで、黒川温泉の先代の方々がどのようにしてコミュニティを創ってきたかを話してくださって、地域では継続すること、変化を恐れずやりぬくことが大切なんだと感じました。文化づくりは、今日明日でいきなり変わるものではなく、長年かけてやるものだと思うと、これまで宮崎の文化を創ってきた重鎮の方々を見る目もずいぶん変わってきました。詳しく話を聞いてみると、懐が深く、地域や若者に愛情たっぷりのキーパーソンや経営者が、宮崎には何人もいるんです。例えば、私の大好きな村岡浩司さんは地元の「一平寿し」の2代目店主ですが、「新しい食文化を創造する」という使命をもち、「街市」をはじめ積極的に地域づくりに取り組んでいらっしゃいます。地域の人に喜んでいただき、地域を潤すために、「経済と想いの中庸」を見つけることを大事にされています。私も経営者の一人として、村岡さんの考え方に影響を受けています。ラボに参加していなかったら、そもそもこんな見方、考え方はできなかっただろうと思います。

―― 今後、コクリ!ラボでやってみたいこと、宮崎でやってみたいことを教えてください。

今後は、ラボのみんなと一緒に、教育、子育て、観光など、共通する地域課題を一緒に解決していけたら嬉しいです。地域、自治体、行政、企業の人たちが一堂に会しているからこそできることはたくさんあるはずです。ラボメンバーと互いの地域を行ったり来たりして、テゲツー!を介してつながりを生み出す試みも続けていきたいですし、宮崎では、地域の力をより活かすための活動を続けていきたい。地域には、スキルをもっているのに、実力を発揮せずに持て余しているおじいちゃんやおばあちゃん、女性、若者などがたくさんいます。それは、その人自身にとっても、社会にとっても本当にもったいない。誰もがもっとハッピーで創造的になれるつながり方、関わり方があるはずで、それを模索するのも私たちの役割だと思っています。

第7回コクリ!ラボ(2015年6月)

開催地/東京
参加チーム/南小国・黒川チーム、チーム上天草 ハッピーズ、小布施チーム、京都チーム、宮崎てげてげPRチーム、高知チーム、那須チーム、海士じゃキンニャモニャ!チーム、信州しおじりチーム、慶應義塾大学チーム、学生チーム、富山・氷見チーム、雪国観光圏チーム、丹波チーム
アドバイザー/三田愛さん、ボブ・スティルガーさん
主な内容/1日目:●愛ちゃんのストーリーテリング ●地域ストーリーテリング 2日目:●地域ストーリーテリング ●オープンデイ〈テーマ:「東日本の人に西日本への移住を勧める(丹波・井口さん)」「地域に関心のある人のネットワークづくりとは(上天草・北岡さん)」「東京都内に地方の面白い人が集まる施設を作りたい(コスモスイニシア・田中さん)」「トカイナカ(京都)で外からの人を受け入れるには?(京都・松井さん)」「チャレンジする文化づくりをより大きなうねりにするには?(宮崎・長友さん)」「ヨーロッパに黒川温泉の支所を出したい!(黒川・北里さん)」「働く人が未来を描ける地域、栃木県那須(那須・安藤さん)」「四万十のお米を発信する(高知・東さん)」「東京都塩尻市(塩尻・山田さん)」〉 3日目:●取り組みたいテーマを地域で考える ●プチOST ●宣言

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