• 2016/02/19
  • Edit by HARUMA YONEKAWA

第2回コクリ!で語り合いたい問い(4) どうしたら、多くの人に「ボーダー」を超えるチャンスを創れるだろうか?

数名のメンバーが、いまコクリ!キャンプで語り合いたいと思う「問い」をご紹介していきます。

コクリ!キャンプで語り合いたい「問い」

第2回コクリ!キャンプは、互いに深くつながったうえで、「これから日本に共創型社会を創っていくために、いま解決したい社会的課題」を皆で出し合い、その本質や解決方法などを皆で対話する場にしたいと考えています。では、コクリ!キャンプに参加するコクリ!メンバーの方々は、いまどのような課題に向き合っているのでしょうか。皆さん、興味のあるところだと思います。コクリ!キャンプ直前の最終回は、企業を人材育成の観点から変えていく「変革屋」として活躍している、株式会社チェンジウェーブの佐々木裕子さんです。

※この問いは、あくまでも佐々木さんが現時点で抱いているもの。コクリ!キャンプで実際に対話するテーマは、当日に皆で決めていきます。ぜひ皆さんも、当日は「問い」を持ち寄ってください。

※これまでの記事はこちら

Q : どうしたら、多くの人に「ボーダー」を超える
チャンスを創れるだろうか?

佐々木裕子さん

以前、あるワークショップに呼ばれました。そこには高校生から社会人まで、さまざまな年齢の男女が参加しており、年齢や性別という意味では多様でした。でも、高校生はインターナショナルスクールの学生ばかりで、社会人は外資系企業で働くビジネスパーソンがほとんど。タイプという面から見れば、かなり一様なコミュニティだったんです。そこで私が感じたのは、たとえば、外資系企業のビジネスパーソンなどに普段まったく縁のない学生がワークショップに加わったほうが、本人も刺激が多いだろうし、全体の多様性も増すのではないかということでした。とはいえ、英語での議論がマストだったため、そうした学生が気軽に参加できるような場ではなかったことも事実です。

佐々木さんとチェンジウェーブの仲間たち

この例に限らず、多くの場合、あるコミュニティの外にいる人が「ボーダー(境界線)」を超え、コミュニティの中に入るのは簡単ではありません。ボーダーを超えるには、相当の勇気とパワーを出す必要がある。それを踏まえた上で、「どうしたら、多くの人にボーダーを超えるチャンスを創れるだろうか?」というのが、私がいま抱えている大きな問いです。

ボーダーは必要だけれど、ボーダーを超えていく必要もある

私が子どもの頃に住んでいた町では、「中学生は常に白いヘルメットを被ること」というルールがありました。自転車に乗るときは当然ですが、歩いているときも。土日にスーパーに行くときも。小学生のときは、自分も中学にいったら当然毎日ヘルメットをかぶるものだと思って準備していました。ところが、別の町の私立中学に行くことになり、いったん町から出てみると、中学生が毎日毎日ヘルメットを被っているということが、いかに異様かに気づくのです。それまでは一切、不思議に思ったことがありませんでした。所属するコミュニティの常識だったからです。ボーダーを超え、違う世界に接しないと、どうしても自分の世界の常識が「当然のこと」になってしまう。似たようなことは、企業でも地域でも、いたるところにあると思います。

地方創生協働リーダーシッププログラム「MICHIKARA」の模様

かくいう私も、日本銀行とマッキンゼーで働いていた頃は、ほとんどクライアントか社内の人々としか、関わりがありませんでした。それが、チェンジウェーブを立ち上げてからは、さまざまな世界とのつながりが生まれています。たとえば先日、チェンジウェーブにデザイナーが参画しました。デザインの力を得ると、私たちが企業や世の中を変革するためにできることがぐんと増えるのです。業界という概念のボーダーを超え、仲間となったデザイナーが、私たちの世界を広げてくれました。

地方創生協働リーダーシッププログラム「MICHIKARA」の模様

ボーダーを一概に否定しているわけではありません。ボーダーがなくなれば、コミュニティや組織はコントロールできなくなってしまう。それは現実的ではありません。ボーダーは、社会に欠かせないものです。ただ一方で、私たちは常に、ボーダーを超えていく必要もあると思うのです。

ボーダーを超えると、開眼し、新たなつながりができる

私の経験では、ボーダーを超えると、いろいろと良いことがあります。まず間違いないのは、「開眼」することです。何かしら、新たな気づきを得られるのです。白いヘルメットの話がよい例ですが、小さなボーダーを超えるだけでも、何かを発見することができます。それが大きなボーダーなら、ビジネスで言う「ストレッチ」(高い目標を設定し、その実現に挑むこと)につながります。

詳しくはコクリ!キャンプでお話ししますが、先日、私たちチェンジウェーブと、リクルートグループ、ソフトバンク、それに長野県塩尻市が一緒になって、塩尻市で、地方創生協働リーダーシッププログラム「MICHIKARA」を行いました。これはもともと、2015年9月に行われた「コクリ!プチキャンプ」で、塩尻市の山ちゃん(山田崇さん)、リクルートライフスタイルの竜さん(飯田竜一さん)と私が同じチームになり、意気投合して始まったプロジェクト。このときは、地域づくりに携わる山ちゃんがボーダーを超え、ビジネスの世界にいる竜さんと私のほうに来てくれた。それがきっかけで、実現できた動きです。そのキックオフミーティングのとき、みんなの前で話した山ちゃんが「久々に緊張した」と言っていました。それは、山ちゃんがボーダーを超え、未知のビジネス世界に触れて、ストレッチをしている証拠。きっとこの後、山ちゃんは何か開眼するはずです。

また、ボーダーを超えるとつながりが増え、さまざまな人と友達になれます。先日、私はあるグローバルCEOカンファレンスに誘われ、参加してきました。実は、最初は本当に行きたくなかったんです。正直、お腹が痛かった(笑)。そもそも私は小さな変革屋を立ち上げたばかりの日本のベンチャー社長でしかなく、世界の巨大企業CEOたちと何を話せばよいのか、わからなかったからです。しかも参加者リストをみると、日本からの参加者は50人中たった2人。そのうち一人は某大企業の会長(汗)。でも、主催者CEOのプライベートジェットの席を一つ空けておいたと言われ、断れなくなってしまいました。

そのコミュニティは、インド、ドバイ、中国、日本…と、グローバルという意味では多様だったけれど、やはり巨大グローバル企業のCEOという特殊な職業のコミュニティであることは間違いなく、最初はボーダーを強く意識して、引け目を感じていました。そのカンファレンスでは別に発言することはマストではありませんでしたが、マイノリティの私の発言がダイバーシティを高めると思い、ある時点で勇気を出して発言してみました。そうしたら、あとでCEOの皆さんが「先ほどの発言について質問があります」と、次々に話しかけてくれたのです。発言していなければ、私はきっと、「いないも同然の人」で終わっていたでしょう。発言の前と後では、世界が一変しました。勇気を出してボーダーを超えてみると、肩書や所属コミュニティに囚われない、そのひとの「人としての顔」がお互いにみえてくる。そこで初めて本当の人間関係を構築できるのだと実感した一件です。

日本から、「諦め」と「知らないことによる機会損失」をなくしたい

私がボーダーを超える人を増やしたいと思う理由は、いくつかあります。一つは、私が「変革屋」だから。私は日本から、「諦め」と「知らないことによる機会損失」をなくしたいと、ずっと思ってきました。そのためには、ボーダーを超える人を増やす必要がある。ボーダーは、固定概念や思い込みをつくります。例えば、あるときチェンジウェーブで、それまで15年間専業主婦だった方を雇用しました。採用の世界ではなかなかリスクのあることだと思われがちですが、彼女は、今や私たちに欠かせない戦力となっています。専業主婦だったからビジネスで即戦力にならない、などということは、決してありません。ボーダーを超えることは、こうした固定観念や思い込みを乗り越え、諦めと機会損失を減らしていく行為なのです。

グローバルCEOカンファレンスの様子

もう一つは、ボーダーを超えていく人が増えないと、日本の変革が難しいと思うからです。先ほどのグローバルCEOカンファレンスでお話しした海外のCEOたちは、「日本好き」でありながら、今後の日本経済にはあまり期待していない「日本パッシング(日本を通過して中国、シンガポールによく行く)」の方がほとんどでした。私はそこで、日本が瀬戸際にある国だと強く実感しました。問題は、変わるのに時間がかかりすぎること、ボーダーを超えていく人が少ないことです。私は日本が大好きだからこそ、ボーダーを超える人を増やしたいと思っています。人口減にしても高齢化にしても、日本は世界最先端の課題先進国なのだから、課題に対応して変わっていくことさえできれば、世界中から注目されるはずです。

三つ目の理由は、これからは「個とコミュニティの時代」になっていくからです。単身世帯が全世帯の3割、4割を占めるようになり、企業が終身雇用でなくなっていく世界では、会社や家族以外のコミュニティがいくつも生まれ、力をもっていくでしょう。そうしたコミュニティがより良い進化を遂げていくためには、ボーダーのどこかに「穴」が開いていて、ボーダーを超えてくる外部を上手に受け入れ、排他的になることを防ぐ必要があります。また、個人にとっても、コミュニティに依存しきって思考停止してしまわないために、「自分は何者か」「自分は何がしたいのか」「自分は何に貢献できるのか」がはっきりしている必要があるように思います。つまり、一人ひとりが自分の存在意義を明確にして、自発的にコミュニティのボーダーを超えていく力をつける必要があるということです。

私がグローバルCEOカンファレンスでそうだったように、大きなボーダーは、誰かから強制的に機会や試練を与えられない限り、なかなか自分で超えようとはしないものです。そこで、改めて冒頭の問いに戻りますが、「皆さんは、そうした機会や試練が与えられる人を日本中で増やすにはどうしたらよいと思いますか?」

コクリ!キャンプから、何か具体的な動きを起こしたい

私にとって、コクリ!キャンプは山ちゃんや前野先生(前野隆司さん)といった人たちとのステキな出会いの場。お二人とも、たまたま隣に座ったことが縁でしたから、当然、今回も新たな出会いのチャンスがあると思っています。ただ、理想論を話すだけで終わってしまってはもったいない。せっかくですから、コクリ!キャンプから何か具体的なプロジェクトや行動を起こしたいと思っています。

第1回コクリ!キャンプにて

佐々木裕子(ささき・ひろこ)
東京大学法学部卒、日本銀行を経て、マッキンゼーアンドカンパニー入社。シカゴオフィス勤務の後、同社アソシエイトパートナー。8年強の間、金融、小売、通信、公的機関など数多くの企業の経営変革プロジェクトに従事。マッキンゼー退職後、企業の「変革」デザイナーとしての活動を開始。2009年チェンジウェーブを創立し、変革実現のサポートや変革リーダー育成など、個人や組織、社会変革を担う。

 

「問題になる前」に取り組んで、世の中の「生きにくさ」を減らしたい――「夢のワーク」と「コクリ!研究合宿」

 

2018年6月の「コクリ!研究合宿@フフ山梨」を経て、なおこさんは、問題になる前に挑戦しないと、世の中の生きにくさを減らすことはできないことに気づいて「家族計画建築」を思いつき、「家と家族についてのラーニングコミュニティ」を立ち上げることを決心しました。

 

コクリ!の深い話(13)知性主義と反知性主義を「同根」と捉えない限り、何も解決できないのではないか? ●ドミニク・チェンさん

 

「大きくならない都市をつくることもできるのでは」「ユーザーが場を発酵させて良い状態にしてくれたWebコミュニティをつくった」「精霊の声やものの声は聞こえる人には本当に聞こえている」といったお話を縦横無尽に伺っていきました。

 

コクリ!の深い話(12)AIが「持続可能で幸せに暮らせるのは地方分散型社会」だと予言した ●広井良典さん×日立京大ラボ

 

「AIを活用した未来シナリオ研究」を行っている京都大学教授の広井良典さんと日立京大ラボの加藤猛さん、福田幸二さんに、「日本の破局を防ぐには、10年ほどで“持続可能性の高い地方分散シナリオ”に持っていく必要がある」というお話を伺いました。

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