• 2016/03/31
  • Edit by HARUMA YONEKAWA

私とコクリ!(3)愛ちゃんは吉田松陰で、コクリ!プロジェクトは松下村塾

コクリ!の場についてどのように感じているか、コクリ!の場をどう活用しているのかを語っていただきました。

齋藤潤一 地域プロデューサー/慶応義塾大学 非常勤講師

コクリ!キャンプやコクリ!ラボと付き合う皆さんに、「私とコクリ!」について語っていただくコーナー。第3回は「じゅんさん」こと、齋藤潤一さんです。なお、じゅんさんには第2回コクリ!キャンプの前日にお話を伺い、キャンプ終了後に改めて感想をいただきました。

コクリ!の場は、地域づくりが好きな少年に戻れるところ

ふだんは、宮崎を拠点にして、主にNPO法人まちづくりGIFTの「地域プロデューサー」という立場で、日本全国10エリアの地域活性プロジェクトのしごと作りを手掛けています。どのエリアでも、自分のミッションである「地域資源を活かしたビジネスによる持続可能な地域の実現」を目指していますが、すでに軌道に乗っているところから種まきを始めたばかりのところまで、プロジェクトのステージは各地でまったく異なります。

宮崎スタートアップバレー

ステージだけでなく、そもそも地域ごとに驚くほど状況や課題が違います。なぜかといえば、そこに住む人々が違うからです。すべての課題は住民同士の「関係性」がつくっているのではないかと感じるほど、人が変われば課題が変わるのです。だからこそ、コクリ!プロジェクトが以前からずっと重視してきた「土創り」がポイントになります。地域の「土」、つまり住民間の関係がよくなって、新たなつながりが生まれ、そのなかから、僕らと同じ志をもって地域を引っ張る仲間が何人か出てくれば、地域を変える取り組みの「芽」が自然と次々に出てきて、ヒト・モノ・カネが地域内外で動いていくようになるのです。地域活性を行う上で、コクリ!プロジェクトの方法論が役立っています。

aya1000

また、2015年には起業家支援団体の「宮崎スタートアップバレー」を立ち上げ、企業・個人を問わずチャレンジする人を支援する活動を行っています。おかげさまで、地元・宮崎に、楽しくチャレンジする若者が増えてきました。さらについ最近、宮崎市内の小学校の校舎を購入し、現在はそこに人材育成の拠点をつくっている最中です。ほかに、地域ブランディング事業の一環として地方の一次産業の販路開拓を担う「aya100」、鹿児島県三島村のジオパークへの観光誘致、秋田県の起業家育成「TOHOKU2020」、地域ビジネスを創出するローカルメディア「MACHI LOG」のプロデュースなども行っています。

鹿児島県三島村のジオパークのメンバーと

コクリ!キャンプやコクリ!ラボに参加するときに何よりも嬉しいのは、こうしたプロデューサーの立場をいったん横に置いて、「個」の原点に戻れるところ、地域づくりが好きな少年に戻れるところです。そして、今の自分を見つめ直した上で、みんなで互いに知恵と経験を共有し、ともに未来を考えていくのです。その意味で、自分にとってコクリ!の場は唯一無二。「現在を感じて、過去に戻り、未来を創る」。そのすべてを味わえるのが、コクリ!キャンプやコクリ!ラボの醍醐味です。特にコクリ!ラボは、ルールがあまりはっきりしておらず、アメーバのようにざわざわしているのがいい。外から見ていて楽しい場ではありません。どっぷり浸かって、個の自分をたっぷりと味わうところです。

太田さんと再会し、保井さんと縁ができ、京都とコクリ!した1年

さまざまな縁が生まれ、次々に「種火」がおこっていったのも、コクリ!プロジェクトに参加して変わったことです。なかでも以前、別の場で、先生として指導していただいた総務大臣補佐官の太田直樹さんと、第1回コクリ!キャンプで再会したのは大きな出来事でした。その後、この1年で何度も宮崎に来ていただく機会があり、そのたびに宮崎の地域リーダーたちを紹介して、みな良い刺激をいただいています。太田さんは、膨大なデータから日本・世界の未来を語る方。いつもその見方から学ぶことがたくさんあります。また、第1回のコクリ!キャンプでは、ラボメンバーのずくさん(藤原正賢さん)の紹介で、保井先生(保井俊之さん)にも出会いました。その場では本当に少ししかお話ししなかったのですが、あとで慶應義塾大学の非常勤講師のチャンスをいただきました。

保井先生(保井俊之さん)と

それから、コクリ!京都の後には、松井ちゃん(松井朋子さん)やけいかちゃん(山本恵果さん)と一緒に、京都メンバーへの取材を行いました。半農半Xの塩見直樹さんとは東京でイベントを行い、大きな反響を得ることができました。塩見さんとのイベントは、今後も継続的に行っていく予定です。

コクリ!京都での対話のひとコマ

明日は第2回のコクリ!キャンプですが、「場に貢献しよう」とか「何かを与えよう」とか、「何かを得よう」という気持ちはこれっぽっちも持っていません。怖いわけでもなく、特別にワクワクしてもいません。遊びに行くといった気分でもない。ただフラットに、「偶有性の海に飛び込む」だけだと思っています。だから、ただドキドキしています。何が起こるか、明日になってみないと何にもわかりません。

コクリ!京都の後、塩見直樹さんと東京でイベントを実施

松陰=愛ちゃんの想いを実現する実行部隊でありたい

個人的には、コクリ!プロジェクトでは愛ちゃん(三田愛さん)の想いを実現する実行部隊でありたいと思っています。彼女の代わりはいません。僕は、愛ちゃんは「吉田松陰」で、コクリ!は「松下村塾」だと考えています。松下村塾も、コクリ!ラボやコクリ!キャンプと同じように参加型の議論・討論が中心で、松陰は塾生たちに「行動が第一だ」と言い続けていたそうです。そして、多くの幕末の志士たちが羽ばたいていった。今はちょうど幕末に似た激動の時代で、日本のあり方に大きな変化が起きており、僕らのような者の意見が通りやすくなっています。コクリ!プロジェクトから、日本を変える多くの人材が輩出されるのではないかと思います。

京都移住計画の田村篤史さんと

僕もその一人として、まずは「コクリ!スクール」や「コクリ!ブックス」のようなものを始めたいと考えています。たとえば、2016年春から丸の内朝大学で「地域リブランディングクラス〜宮崎県綾町と東京をつなぐサービス開発〜」をスタートしますし、他にも地域づくりを教える学校を開く予定があります。さらに「コクリ!ブックス」の第一弾として、『稼ぐ地域の教科書』の制作も始めています。コクリ!メンバーにもどんどん登場してもらう予定です。

日本に、目のキラキラした人を増やしたい

以前、バングラディッシュのスラム街の子どもたちに会ったことがありますが、彼らは「医者になって、お父さんの病気を治すんだ」などと口々に言っては、目をキラキラさせていました。僕が目指しているのは、日本中の地域にこうした輝きを増やすこと。そして、活気とやりがいに満ちた社会を創り上げることです。そのために何よりも必要なのは、一緒に地域を創っていく「仲間づくり」です。コクリ!プロジェクトには互いに刺激し合える仲間が多く、互いに影響し合うことで、自分の火がどんどん大きくなっているのを実感します。全国各地のプロジェクトで火をくべ続けられるのも、コクリ!プロジェクトで自分が大きく燃え上がっているおかげです。

人間界と自然界は本当に似ていて、晴れの日だけでなく、雨の日や風の日があるように、地域も直線的に良くなっていくものではなくて、大変な時期、辛い時期が必ずやってきます。花が咲いたと思ったら、すぐに散ってしまうこともあります。しかも、すべての土地はそれぞれびっくりするほど違うので、地域づくりはいつもゼロからのスタート。その土地の歴史と文化を学ぶところから始めます。ものすごく手間ひまがかかる取り組みで、誰もやりがたらないことですが、だからこそ、僕らが頑張るときだと考えています。

※ここから先は、第2回コクリ!キャンプが終わった直後の感想です。

正直、居心地の良さに危機感があります。もっと厳しい雰囲気づくりをしてもよかったのではないかと感じています。ここから本当に、先進的な実践や兆しが生まれるのでしょうか。ここに果たして幕末の志士が何人いるのでしょうか。自分が先頭切ってチャレンジしなくては、ロールモデルにならなくてはという使命感が一層強くなりました。まさに「行動が第一だ」ですね。