• 2015/11/19
  • Edit by HARUMA YONEKAWA
  • Photo by KENICHI AIKAWA / TOYOAKI MASUDA / TAISUKE NAKAMURA / HIROSHI MIMURA

私とコクリ!(1)コクリ!の場は、モタモタしているから、いい

コクリ!の場についてどのように感じているか、コクリ!の場をどう活用しているのかを語っていただきました。

山田崇
塩尻市役所企画政策部企画課シティプロモーション係 係長/空き家プロジェクトnanoda代表

コクリ!キャンプやコクリ!ラボと付き合う皆さんに、「私とコクリ!」について語っていただくコーナーです。第1回は山ちゃんこと、塩尻市の山田崇さんにお聞きしました。

「日本の歴史の転換点」となる場だからこそ、グルグル進む

2015年2月の第1回コクリ!キャンプが、はじめてのコクリ!体験です。そもそもは2014年11月の小布施若者会議で、コクリ!プロジェクトの中心メンバー・愛ちゃん(三田愛さん)と出会ったのがきっかけでした。愛ちゃんは小布施若者会議のファシリテーターで、私は3時間遅刻してしまったんです。どこかで借りを返さなければと思っていたら、愛ちゃんからコクリ!キャンプへのお誘いがあったというわけです。実際に参加してみたら面白くて、以降、多くの場に参加してきました。

コクリ!の場で魅力的なのは、最初に答えやシナリオが決まっていないところ。たとえばコクリ!ラボは、1日目の流れによって、2日目、3日目の内容が変わることがよくあります。私たちの発言や行動によってプログラムが動いていく。当然、モタモタや停滞や混乱を感じる時間もありますが、だからいいのだと思います。

「100年後に振り返ったとき、“ここから日本が変わった”と言われる場にしたい」。愛ちゃんが、第1回コクリ!キャンプの冒頭で放ったメッセージです。私はこの言葉が気に入っていて、コクリ!は本当にそういう場になると信じていますし、そういう場にしていきたい。「ヘーゲルの弁証法の“事物の螺旋的発展の法則”によれば、世界はあたかも“螺旋階段”を登っていくように発展します」。キャンプでお話しされた田坂広志さんの言葉は、衝撃的でした。世界が螺旋階段を上るように発展していくのなら、最初に答えを決めて、まっすぐ上っていくのは発展ではありません。本当に日本や世界を変える場は、コクリ!の場のように、ときに停滞し、混乱しながら、グルグルと回るように進んでいくのだと思います。モタモタしているからこそ、コクリ!は信用できます。

コクリ!の場では、一個人としていられる

私は根っからの公務員です。大学卒業以来、ずっと長野県塩尻市で働いてきました。ですが、コクリ!の場には、少なくとも意識の上では公務員として参加していません。公務員としての私は、結論が出ないことをあまり考えないし、ファシリテーター役が多いこともあって、いつも場を俯瞰しながら、全体のバランスを取ろうとします。対して、コクリ!の場では、いつも一個人に戻るんです。愛ちゃんや周りの人たちに転がされながら、自然体で過ごすのが気持ちいい。結論が決まっていないから、絶えず新たなことを考えなくてはなりませんが、それが楽しい。わからないなりに頭を巡らしながら、みんなと共創していくプロセスが心地いいんです。面白いのは、コクリ!の場で日本の未来を考えているうちに、塩尻への愛着が強くなってきたこと。まちを離れているときこそ、自分の原点を意識するのかもしれません。

コクリ!で増えたチャンスを「実現する仕組み」をもっている

コクリ!の場を通して、人脈と情報とアイデア、そしてそこから生まれるチャンスが確実に増えました。たとえば、2015年9月に開かれた「コクリ!プチキャンプ」で、変革屋の佐々木裕子さん(株式会社チェンジウェーブ 代表)、リクルートライフスタイル人事部の飯田竜一さんと「都会の20代~30代(ポストユース)をどのようにコクリ!に巻き込めばよいか」というテーマで盛り上がり、その後、そのときに生まれたアイデアを実現するべく、トントン拍子で話が進んでいます。プチキャンプからたった2カ月弱でフィジビリを開始するとともに、岡山県西粟倉村、長野県小布施町、兵庫県丹波市、宮崎県宮崎市、それから首都圏の企業と一緒に、市の施策として「ポストユース・コクリ!プロジェクト」を実施しようと企画するところまで行きました。

このようにして、自らの行動やリサーチで生み出してきたアイデアを塩尻市で実現に移していくルートを、私は大きく3種類もっています。市の企画課や各部署を通して政策化するルート、私の所属するシティプロモーションチームのメンバーでアクションを起こすルート、それから私が一市民として塩尻市内の空き家を借り、さまざまなイベント活動を行っているプロジェクト「nanoda」で実行するルート。規模やスピード感などに合わせて、3つのルートを使い分けています。ポストユースプロジェクトに関していえば、nanodaでフィジビリや準備を行いながら、来年の市の施策として企画・検討を進めています。

アイデアを実現していく上では、仲間たちの存在が欠かせません。2011年から行ってきた塩尻市若手職員意見交換会「しおラボ」のコアメンバーたちが、私の状況をいつも冷静に観察しながら、的確なサポートやコーディネートをしてくれています。彼らの力があるから、私は市の営業マンとしてプロモーションやリサーチ、政策化・仕組み化に徹することができる。今回のポストユースプロジェクトのようなスピーディーな案件にもバッチリ対応してくれる仲間たち、自由に行動し、チャレンジさせてくれる上司には日々感謝しています。

塩尻の成功例を全国にgiveして、日本全体で元気になればいい

ポストユースプロジェクトが成功したら、ぜひ全国で真似してほしい。これに限らず、成功例を自分たちだけのものにしておくのはもったいないと思っています。塩尻市やnanodaの成功例は、全国にgiveして、日本全体で元気になればいいんです。実は、私自身、これまでいろいろと真似をしてきました。nanodaは、コクリ!プロジェクトにも深く関わっている坂倉杏介さん(東京都市大学都市生活学部准教授)が手がけてきた「三田の家」のミラーですし、しおラボは、私が東京都内の地方自治体に勤める公務員のコミュニティ「TOPIC」の集まりでワールドカフェを知り、その後にワールドカフェを学んで立ち上げたもの。私たちは、こうしてどんどん真似し合えばいいと思うのです。nanodaもしおラボも、私を巡る塩尻市の実行体制も、いくらでも参考にしてもらってかまいません。

いまは公務員にとって「正解のない時代」です。正解がない以上、答えは自分で行動してつくっていくほかありません。私が2012年にnanodaを始めたのは、一度私自身が現場に身を置いて、商売をする人たちを身近に感じてみなければ、市の職員として魅力ある商店街をつくることなどできないと考えたから。私は私なりに、一軒の空き家と6万6839人の塩尻市、ミクロとマクロを振り子のように行き来しながら、螺旋をグルグルと上っていこうとしているのです。世のなかには、やってみないとわからないことがたくさんある。行動を起こしましょう。そして、共に良い未来を創っていきましょう。