• 2018/01/29

地域のまるごとシステム変容を起こす――「場づくりの6つの要素」とは?

コクリ!プロジェクトの「場づくりの6つの要素」は、地域のまるごとシステム変容を起こしたり、GI を先取りする地域プロジェクトを起こしたりするためのコクリ!2.0時代の場づくりの方法論です。

コクリ!2.0の場づくりには6つの要素が欠かせない

2016年まで進めてきた「コクリ!1.0」は、主に地域の土壌づくりのための理論でした。地域のなかに「コアチーム」をつくり、そのコアチームを中心にしてコ・クリエーションを起こすための土壌(場やつながり)を豊かにしていけば、その地域に次々とコ・クリエーションが起こるだろうという考え方がベースにありました。それに対して「コクリ!2.0」では、単にコ・クリエーション・プロジェクトを生み出すだけでなく、その地域がまるごとシステム変容するプロジェクト、あるいは日本や地球全体の縮図としてGI(ジェネレイティブ・インテンション)を先取りする地域プロジェクトを生みだせるように、場づくりの方法論をバージョンアップしました。それらを6つの要素として整理したものがこちらです。

まず全体を簡単に解説すると、コクリ!2.0では、「脱リーダー偏重主義」「イニシャルシステム」といった対等な関係で創発しやすい場の構造と、「システム思考とシステムセンシング」「超地域のコ・クリエーション」などの変容と創発を起こす仕組みとプロセスを通じて、「一人ひとりの自己変容」を起こし、それが「まるごと変容」につながっていくと考えます。そして、まるごと変容が、また一人ひとりの自己変容を呼び起こすのです。ぜひ全体図を見ながら、各要素の説明をお読みください。

なお、コクリ!2.0の場づくりをする際は、主催者が「覚悟」を持ち、リスクを取ってチャレンジすることが重要です。そのあり方が伝播し、一人ひとりの自己変容につながっていく原動力となるからです。

地域リーダーだけに依存していては地域をうまく変えていけない

(1)まるごと変容

コクリ!2.0では、地域に存在する目に見えない構造や隠れた相互作用、あるいは地域の皆さんのメンタルモデル(考え方の前提)を感じ取り、変容させていくことで、ビジネス・雇用・文化・社会関係資本(人間関係の質)・コミュニティ・教育・医療・福祉・子育て・交流・テクノロジー、住民一人ひとりまで、地域のさまざまなことをまるごと変えようとします。なぜなら、地域では、それらが密接かつ複雑に結びついているからです。コクリ!2.0は、まるごと変容を目指すことで、無理のない地域変容を実現しようとしています。

(2)脱リーダー偏重主義

これまでは、少数の「地域リーダー」がスポットを浴びがちでした。しかし最近、地域リーダーだけに依存していては、地域をうまく変えていけないケースが多いことがわかってきました。なぜなら、私たちにはリーダーの力を高く見積もりすぎてしまう傾向があるからです。私たちはつい、地域リーダーはもっとできると考え、さまざまな責任や業務を押しつけてしまうのです。それでつぶれてしまうリーダーも少なくありません。

そこで、コクリ! 2.0 では、「脱リーダー偏重主義」を打ち出しています。たとえば、リーダーの下にいるナンバー2がより大きな力を発揮したり、現場で働く若手メンバーがもっとイキイキと主体的に動いたりするように促すことで、地域のまるごと変容が加速すると考えています。これは、野球やサッカーなどで、エースや中心選手だけが頑張るのではなく、チームがまとまって「全員野球」「全員サッカー」をするほうが、チームが強くなることに似ています。この脱リーダー偏重主義を実現するためには、少数のリーダーだけが集まる場ではなく、リーダーを含めた多様なメンバーが対話し、つながれる場をいくつも設けていくことが大切です。そうした場が、地域の一体感を少しずつ育んでいくのです。

(3)イニシャルシステム

コクリ!には、「想いは似ているが、違うセクターの3人以上」というチーム分けのルールがあります。ベースになる想いや考え方は近いのですが、普段は違う場所にいたり、立場がまったく違ったりする方々を引き合わせると、想定以上の化学反応が起こることがあるのです。

コクリ!2.0では、こうしたいくつかのルールやパターンを利用して、最適な「イニシャルシステム(システムの初期状況)」を追求しています。ちなみに、コクリ!では、こうしたルールやパターンのもとでチーム分けをする際、かなりの時間と手間をかけています。コクリ!プロジェクトは、それほどイニシャルシステムを重視しているのです。コクリ!2.0は、参加者の対話や行動から偶然の創発が起こることを狙っており、主催者側はできるだけ途中の介入を少なくしています。その分、チームメンバーが対等に学び合い、深くつながりたいと思える環境や組み合わせを作ることに大変な注意を払っているのです。初めの出会い次第で、その後が大きく変わる可能性があるからです。

一人ひとりの自己変容が地域システム全体を変える原動力になる

(4)システム思考とシステムセンシング

地域のまるごと変容を起こす際に欠かせないのが、コクリ!2.0の場の参加者に「システム思考」と「システムセンシング」を体験・体感していただくことです。システム思考とは、あるもの(この場合は地域)を1つのシステムと見て、そのシステムにある問題を見出し、新たなチャンスを見つける思考法のことで、システムセンシングとは、そのシステムを身体で感じることです。

コクリ!2.0の参加者の皆さんには、「対話」や「身体ワーク」などのプログラムを通して、この地域システムとその問題点を具体的に考え、感じていただくようにしています。その結果、参加者の皆さんは、たとえば「自分の考え方や行動が変われば、ひょっとしたら地域が変わるのかもしれない」と、頭と身体の両方で理解していくのです。これが、まるごと変容の第一歩となります。

(5)超地域のコ・クリエーション

コクリ!2.0の場には、どのような場でも、地域の皆さんだけでなく、都市や他の地域からの参加者(コクリ!メンバー)が必ず参加しています。そして、地域の皆さんと地域外の皆さんの「あいだ」に創発を起こそうと狙っています。これが、地域を超えた「超地域のコ・クリエーション」です。地域外のメンバーが地域の皆さんと対等な立場でつながり、相互に学び合いながら、一緒に新たな取り組みを行うことで、変容のきっかけを作ろうとしているのです。

なぜ超地域のコ・クリエーションを重視するかと言えば、「あいだ」こそ、最も創発が起きやすいからです。当然、地域メンバーと地域外のメンバーのあいだには、先ほども触れたように「相違点」があります。たとえば、物事の見方がまったく違うケースは少なくありません。こうした相違点のあいだに、画期的な「第三の道」が見つかることがよくあるのです。私たちは、その第三の道からイノベーションが生まれ、地域を大きく変えることを期待しています。

(6)一人ひとりの自己変容

地域のまるごと変容に最も効果的なのは、地域の方々一人ひとりの見方や考え方が「進化」し、生き方や働き方が根本から変わることです。コクリ!の場で、超地域のコ・クリエーションなどを通して見方や考え方の本質的な部分が変わると、その人の物事への対処の仕方や周囲への接し方が大きく変わります。私たちは、これを「自己変容」と呼んでいます。

コクリ!2.0では、参加者一人ひとりの自己変容が、地域システム全体を大きく変える原動力になると考えています。たとえば、地域リーダーが周囲への接し方を変えると、当然、周囲に良い影響が及びます。その結果、リーダーの下にいるナンバー2やメンバーなどが動きやすくなれば、地域が少し良い方向に向かうでしょう。こうした自己変容が連鎖的に起これば、地域は数年で劇的に変化することもあり得るというのが、私たちの仮説の1つです。これは、「ツボを押すと、身体の調子が良くなる」という中国医学の考え方に似ています。地域システムが身体だとすれば、地域の一人ひとりがツボです。つまり、コクリ!2.0は、地域内のいくつものツボを押すことで、地域全体の調子が徐々に良くなっていくと考えているのです。

PAGE
TOP