ずくくん／藤原正賢（ふじわら・まさたか）さん
慶應義塾大学 SFC 総合政策学部

〈仕事〉

信州若者1000人会議やKISEI FESを手がけ、信州を舞台に場をつくり続ける大学生

「ずく」というのは長野の方言で、「根気、やる気、根性、気力」といった意味に当たる言葉で、よく働くことを「ずくがある」、面倒くさがって動かないことを「ずくなし」というそうです。よく働く男を目指す「ずくくん」は、慶應義塾大学の大学生。2015年4月からの1年間は休学し、一般社団法人信州若者会議にインターンしていました。

ずくくんはこれまで、大学に通いながら、一方で「小布施若者会議」「信州若者1000人会議」などの企画・実行・運営に関わってきました。その原点は高校時代。著書を読んで感動し、単身訪ねていった山形アル・ケッチァーノのシェフ、奥田政行さんに「地元を幸せにできないヤツが誰を幸せにできるのか」と言われたことや、地元近くの廃線イベントで知り合った「小布施ワイナリー」の曽我さんに憧れたことなどから、「長野の可能性をもっと引き出したい」と思うようになったのだそうです。

2016年は、8月に新たに行う「KISEI FES」、そして10月の信州若者1000人会議2016に向けて、すでに準備を始めています。KISEI FESとは、信州出身の若者たちがお盆に帰省したときに集まれる場を作ろうということで、「おいしいもの×音楽×信州企業」をテーマにして行われるフェス。信州若者1000人会議は、文字通り長野県の若者たちが集まって対話するイベントです。

こうしたイベントの企画・実行・運営を経て、「大学生の実行委員が自ら会議を創っていくプロセス」に価値を見出したずくくんは今、起業も視野に入れて活動中です。長野の学生が企画・実行プロセスを提供して価値を生むとともに、さまざまな人が繋がり場をつくる事業を立ち上げたいと考えています。

〈コクリ！〉

コクリ！ラボに初期から関わり、今は長野にコクリ！を広めようとしている

ずくくんは、2013年の小布施若者会議で愛ちゃん（三田愛さん）と知り合い、その後、小布施若者会議を始めた大宮くん（大宮透さん）に誘われて、2014年5月の第3回コクリ！ラボからコクリ！プロジェクトに参加しており、学生チームの核として初期から活躍しています。「コクリ！ラボやコクリ！キャンプでは、皆さんが自分のような学生も対等に扱ってくれる。本当にありがたいです」と語るずくくんは、コクリ！の場を通して、深いつながりを数多く創ってきました。たとえば、長野へのUIターンイベントに大島さん（大島正幸さん）、しまっちさん（島田昭彦さん）をゲストとして呼んだり、長野を盛り上げるために大宮くんや山ちゃん（山田崇さん）とさまざまな仕掛けを行っています。

ずくくんにとって、特に小布施若者会議の場が衝撃的だったそうです。ファシリテータ―の愛ちゃんときくおさん（本多喜久雄さん）が仕掛けたワークショップによって、場の温度がどんどん上がっていったことに驚いたと語ります。「3日目の最後に、参加者・ゲスト全員が円になり、一人ひとりが一歩踏み出しながら、〈市長になりたい！〉〈会社を辞めて、長野に帰ります〉などと、それぞれが心の底から挑戦したいことを語っていった光景を、今でも思い出すと胸が熱くなるくらい、鮮明に覚えています。全員が語り終わったとき、自分もこういう場を実現したいと思いました」。

さらに、2016年2月の第2回コクリ！キャンプでは、愛ちゃんから「種火のバトン」を受け取ったと言います。「第2回コクリ！キャンプの次の日は、疲労と無力感でなかなか起き上がれませんでした。起き上がれないほど、集合知の力、多様であることの価値を強く感じ、場の力に圧倒されたのです。こうしたコクリ！の力を長野に広め、皆がやりたいことにチャレンジでき、お互いに繋がり科学反応が起きていく社会を創りたいと思っています」。その第一歩として、ずくくんは今、KISEI FESや信州若者1000人会議をコクリ！的に仕立てようとしています。「コクリ！の場を増やすことで、一人ひとりが人生をポジティブにとらえ、その人の持つエネルギーが最大化されることで、たとえば若者の自殺率が減るといった結果につながったら嬉しいです」。