• 2017/10/16
  • Edit by HARUMA YONEKAWA
  • Photo by KENICHI AIKAWA

コクリ!キャンプ2017予告編(2)利用する?意図を手放す?~参加者からのメッセージ

第3回コクリ!キャンプ参加者の皆さんへのメッセージです。

2017年11月に行われる「コクリ!キャンプ2017」。その参加者の皆さんにお送りする予告編メッセージをオープンな記事でお伝えします。第2弾は、コクリ!キャンプ2017に参加する予定のやなさん(柳澤大輔さん・面白法人カヤックCEO)、べっく(阿部裕志さん・株式会社巡の環 代表取締役)、宮城さん(宮城治男さん・特定非営利活動法人エティック 代表理事)の3人に、期待や抱負、今の想いなどを語っていただきました。

●やなさん(柳澤大輔さん・面白法人カヤックCEO)のメッセージ

「誰とするか」「どこでするか」「何をするか」が揃っている!

建長寺は、鎌倉時代につくられた鎌倉五山のひとつ。日本の禅の中心地で、由緒あるお寺です。そんなお寺なのですが、一方でとても開かれていて、これまでに先進的な試みをいくつも行っています。たとえば、東日本大震災の後、鎌倉では神道、仏教、キリスト教の3宗教が宗派を超えてつながる「鎌倉宗教者会議」という試みをおこなっていますが、建長寺もその中心を担っています。また先日は、初のマインドフルネス国際フォーラム「ZEN2.0」が建長寺で開催されています。各時代の偉い方々が禅僧にさまざまな相談をしてきた場所でもあって、今回のコクリ!キャンプのように「みんなで自己開示・自己変容しながら、まったく新しいことを生み出す」プロジェクトには、かなり適したところです。

やなさん(柳澤大輔さん・面白法人カヤックCEO)

もう少し視点を広げて、鎌倉全体を見ると、鎌倉は都内から近い田舎で、江ノ電が12分に1本の運転間隔を守っているのをはじめ、ゆったりとした時間が流れる土地。その一方で、日本でいち早くナショナルトラスト運動が起こったり、外国野菜を先駆的に輸入して「鎌倉野菜」として栽培する人がいたりと、先進的な方々が住む街でもあります。また、肩書きをあまり気にしない住民が多く、居酒屋などでたまたま隣になって仲良くなった人が、実はスゴイ人だったという話をあちこちで耳にします。そんなところも、コクリ!に合った街ではないかと思いますね。

なぜ僕が建長寺や鎌倉に詳しいかといえば、鎌倉が僕の地元であり、職場(面白法人カヤック)のある場所だからです。以前には、自分が主催する「カマコン」のメンバーたちと、建長寺で「死」について深く語り合う合宿を行い、互いに自己開示してぐっと仲良くなったこともあります。だからこそ、「コクリ!キャンプのメンバーと建長寺で話したら、いったい何が生まれるんだろう?」と、今からワクワクしています。

コクリ!キャンプには過去2回とも参加しましたが、感覚の近い人、気持ちの良い人、その場で起きることにしなやかに対応・反応している人が多かった印象がありますね。きっと今回も、その場で生まれるインプロビゼーションをみんなで楽しめるはず。その点は何の心配もしていません。

カヤックが大事にするキーワードに、「何をするかより誰とするか」があります。「誰とするか」が一番重要だというのが、僕の持論なんです。ただ、もちろん「何をするか」も大切ですし、「どこでするか」も大事です。今回のコクリ!キャンプには、その3つが高いレベルで揃っている。そこから何を生み出せるのか、何が生まれてくるのか、アウトプットに期待しないわけにはいきません。ぜひ一緒に、日本や世界のティッピングポイント、世の中の潮流となるような成果を出していきましょう。

●べっく(阿部裕志さん・株式会社巡の環 代表取締役)のメッセージ

ジャングルの中に動物を探しに行く感じ

僕はいま、コクリ!キャンプに対して「2つの想い」を持っていて、その間で揺れ動いています。1つは「コクリ!キャンプを上手に利用したい」という想いです。というのは、2017年4月から、僕の住む海士町のこれからを創る「コクリ!海士プロジェクト」を始めたからです。このプロジェクトには、海士の外にいるコクリ!メンバーの力が欠かせません。今回のコクリ!キャンプで出会う方にも、ぜひコクリ!海士プロジェクトに関わっていただきたい。この場で、多くの方をスカウトしたいという気持ちがあります。

もう1つは、「そうした想いを手放して、ニュートラルな気持ち、穏やかな気持ちで参加したい」という想いです。なぜかというと、その場を利用したいという期待や意図が強いと、11月7日に起こることにフタをしてしまう可能性があると思うからです。コクリ!キャンプでは、さまざまな想いを手放したほうが、結局は得るものが大きいんじゃないかと感じています。

べっく(阿部裕志さん・株式会社巡の環 代表取締役)

そもそも僕には、想定しえない新たな叡智が生まれるところに跳びこみたいという気持ちがあります。なぜなら、自分の想定できることだけで海士町の未来を本当に良いものにできるとは思っていないから。そして、コクリ!の場は、自分が想定していないものごとに出会えるところなんです。たとえば、僕はこれまで、コクリ!の場を通して、みんなの前でボロ泣きしながら自分が何に引き裂かれているかに気づいて、働き方や生き方を根本から変えることになったり、英治さんと「ないものはない大学出版会」を立ち上げることになったりしてきました。どちらも、始める前はそんなことになるなんて、思ってもみなかったこと。さらに言えば、コクリ!海士プロジェクトでは、そうした出会いが海士町のさまざまな人に起こっていて、その結果、外との交流に前のめりになる海士町の方が確実に増えていて、海士全体が変わりつつあります。今回のコクリ!キャンプでも、そうした未知の何かに出会いたいと思っています。

以前、あるところでこんな話を聞きました。「自分のなかにある新しい声を聞いたり、いまここにないものを生み出したりするのは、ジャングルの中に動物を探しに行くようなものだ。自分の心や体がザワザワしていたら、動物は決して現れない。大事なのは、その場に集中すること、じっと耳を澄ますことだ。そうしたら、思いもかけぬところから、ひょいと動物が出てくるはずだ」。きっとその通りだろうと思います。

僕はコクリ!の場で、さまざまな“動物”に出会ってきました。そして、今回のコクリ!キャンプでも、僕はまだ見ぬ“動物”を見つけたい。そのためには、コクリ!キャンプを利用しようなんていうザワザワした想いを一度手放さなければなりません。当日は、既存の延長線上にないものを創り出すために、日常の思考をいったん横に置き、その場に生まれるものに全力を注いで、瞬間の爆発力に賭けたいと思っています。

●宮城さん(宮城治男さん・特定非営利活動法人エティック 代表理事)のメッセージ

「21世紀のものさし」を皆さんと見つけ出したい

今回コクリに初めて来られた方、きっと「わけのわからないところに呼ばれた」と困惑されていることと思います。よく来られる方も、「忙しいのに、なんで自分はここにいるんだ」と思われる瞬間があるでしょう。ただ実は、わけがわからないこと、従来の尺度で計りようがないことこそが、コクリの価値なのかもと思うんです。

今回のコクリ!キャンプは、ズバリ「新しいものさし」を創る挑戦であり、実験だと捉えています。この場を通して、「21世紀に必要な価値基準」をぜひ皆さんと一緒に生み出せたらと思います。

最近、とくに高校生や大学生たちと話していて、20世紀的な価値観、従来の資本主義社会で重視されてきた指標の意味が、急速に相対化してきているように感じます。彼らの多くは、年収などの経済的な値で自分たちの価値を計ることをかなり強く疑いはじめています。それが生きがいや幸せにつながらない、フィットしないと。

宮城さん(宮城治男さん・特定非営利活動法人エティック 代表理事)

しかし、KPIといわれるわかりやすい数字が持てはやされる一方で、経済指標にかわる社会的な指標や価値観があるかと言えば、少なくともまだ明確には存在していません。それがないために、現状は第三者の説得が難しいのです。たとえば、ETIC.を通して東北被災地の企業に入ったある若者が、「地域の雇用創出を頑張っている企業で、雇用され働いている皆さんが、全然楽しそうじゃない」と感じたことがきっかけで、コミュニティ支援の中間組織を立ち上げようとしています。彼女は、地元の景気が良くなって雇用が増えることが一番ではなくて、皆さんが楽しく暮らすことが最も大切なんだという考え方を広めたいと思っているのですが、その想いが周囲になかなか伝わらなくて困っているのです。彼女は、「自分でもときどきわからなくなってしまう」と言います。その背景には、社会的に多くの人が合意できる新たな価値基準がないという問題があります。

本当は、ここ10年、20年ほど、20世紀的なものさしの力は徐々に弱まってきたのだと思います。ですが、私たちはそのことに正面から向き合ってきませんでした。自分たちが本当に目指したい社会や価値を、意識せずに働いてきてしまった。そして、ここに集まっていらっしゃるご縁があるようなみなさまは、すでに従来のものさしでは自分は満たされにくいと気づいていらっしゃる方々なのだと思います。

私は、このコクリ!キャンプこそ、21世紀の新しいものさしを生み出すチャンスだと考えています。何よりも、ここには未来を創造できるメンバー、世の中を古いしばりから解放したいと願うメンバーが揃っています。それに、愛ちゃんたちは、左脳的なロジックや日常のしがらみから自由になるために、あの手この手のヘンテコで実験的なプログラムをいつも用意してくれます。この場なら、みんなが日常からいったん離れて、心の深いところで抱いている疑問を直感的にすくい上げ、それを言葉にして共有し、そこを出発点に新たな見方を創造することができると思うんです。それにそもそも、ここに集まるメンバーが、この場でゲームのルールチェンジをしなければ、いったい誰がするんでしょうか? ここに集まってしまった、ということは、その務めがあるとあきらめていただくしかないかと。新たなものさしを創り出していくことは、未来の社会のあり方を創造していくことそのものだと思いますし、多くの方が地域と地方創生に着目くださっている一番のインパクトもそこにあるような気がします。

コクリ!キャンプは、自覚してこなかった領域、まだ知られていない領域に向き合う実験の場です。11月7日は、「社会は、地方創生はこうあるべきである」といった先入観をいったん棚上げして、日常的なロジックやしがらみを忘れ、自分をできるだけ空っぽにして、その領域に一緒に向き合い、未来を創造していく一日です。一緒に楽しみましょう。

建長寺庭園の風景。この右に見える建物が当日の会場です。
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