2015年2月17日、恵比寿ガーデンホールにて“第1回コクリ!キャンプ”を開催しました。ここでは、その内容を「全体視点」と「個別視点」でご紹介していきます。なお、個別視点では、参加者の一人であり、ラボメンバーでもある「ゆうきさん」から見たコクリ!キャンプの模様をお伝えします。では、早速参りましょう。レポート第1部はオープニングから、田坂さんのインスピレーショントークまでです。
参加者を案内する人も、参加者だった
開始前
当日は、朝7時頃から設営開始。空間や照明の準備が着々と進み、11時頃には会場がまさにキャンプのように仕上がりました。その頃には、制作チームはもちろん、当日スタッフも全員集合。その中には、ゆうきさんの顔もあります。なぜかというと、彼女をはじめコクリ!ラボのメンバーは、コクリ!キャンプの参加者であるとともに、開始前には参加者の方々をエスコートする当日スタッフでもあったからです。
12時45分に開場すると、続々と参加者がいらっしゃいました。皆さんには、受付をして荷物をクロークに預けた後、会場の入口前で名札をつくっていただきます。コクリ!キャンプは肩書きを外す場ですから、名札には肩書きなし。ニックネームと、スキル・趣味・特技などの「つながりキーワード」を自由に書いていただきました。
名札づくりが終わったら、当日スタッフのエスコートで会場入り。ご自身の席を確認したら、会場の後方でお菓子やお茶を手にしながら、参加者同士のコミュニケーションが早速そこここで始まりました。平日の午後にもかかわらず、13時30分、開始のときにはほぼ全員が着席しており、遅刻者は2~3名ほど。開始前から、約130名のタネビストの皆さんの高い意欲をひしひしと感じました。
映像と瞑想で、気分を整える
オープニング
コクリ!キャンプは、オープニング映像からスタート。
この映像で皆の気持ちを一段高めてから、第1回コクリ!キャンプのファシリテーター、愛ちゃん(三田愛さん)ときくおさん(本多喜久雄さん)が登場してご挨拶。コクリ!キャンプが“日本レベルのコ・クリエーション”を行う場であること、コクリ!キャンプのルールなどをお話しした上で、チェック・イン(チーム内での自己紹介)をして、しばし瞑想タイム。そしていよいよ、インスピレーショントークの始まりです。なお、オープニングの段階では、参加者は所属、地域、年齢、性別などの多様性をもった4~6名のチームに分かれています。ゆうきさん(旅館社長・NPO代表)のチームは、田坂さん(大学教授)、良ちゃん(地域首長)、ボブさん(海外)、きたっちさん(企業社長)、えいすけさん(クリエイター)の6名でした。
「ボランタリー経済」と「目に見えない資本」が、 これから、大きな影響力を持つようになっていく
インスピレーショントーク・田坂さん
第1回コクリ!キャンプでは、プログラムのはじめに「インスピレーショントーク」と題して、コ・クリエーションに詳しい田坂さん(田坂広志さん:多摩大学大学院教授、世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Agenda Councilメンバー)に、今の時代に必要な思考の枠組みを得るための講演をお願いしました。ここでは以下、田坂さんのお話を簡単に要約して箇条書きでお伝えします。もっと詳しく知りたい方は、ぜひ音声をお聞きください。
このトークは、場に大きな影響を与えました。その証拠に、参加者の多くが、田坂さんのトーク内容や概念を何度も語り直していきましたし、終了後に参加者に感想を伺った「キャンプログ」では、“印象に残っている出来事や刺激を受けた言葉”として、「田坂さんの言葉は金言でした」(風見正三さん)、「田坂広志さんのお言葉に、深い感銘を受けました」(岸本綾さん)という言葉に代表されるように、実に回答者の48%が田坂さんの言葉を挙げていました。会場には、改めて深くうなずき、納得する田坂ファンの方もいれば、田坂さんの語りを初めて耳にして、感動のあまり涙する方もいました。その点も多種多様で、コクリ!キャンプらしい反応だったと思います。
田坂さんトーク音声+静止画
〈田坂さんトーク要約〉
●私たちは、未来を自分たちの思うようには創れません。時代の流れ、歴史の流れの「目」(方向)があるからです。自分たちの未来を戦略的に創っていくためには、その「目」を読み、世界がどの方向に向かっているかを洞察することが大切です。
●ヘーゲルの弁証法の「事物の螺旋的発展の法則」によれば、世界はあたかも「螺旋階段」を登っていくように発展します。言葉を替えれば、古く懐かしいものが、新たな価値を伴って復活してきます。例えば、メールは手紙やはがきといった懐かしいコミュニケーション・ツールの復活です。
●その法則から見れば、人類社会で最も古い経済、「善意や好意で相手に価値あるものを贈る経済」=「ボランタリー経済」が、これから復活してきます。そして、コ・クリエーションは、この「ボランタリー経済」の復活です。
●この「ボランタリー経済」は、人類の歴史を通じて、家事、育児、介護、火の用心など、一貫して、この社会を支えてきました。しかし、「マネタリー(貨幣)経済」の視点からは、その存在を無視されてきました。しかし、ネット革命によって、この「ボランタリー経済」が、急速に、その影響力を増しています。
●そして、この「ボランタリー経済」においては、貨幣以外の「目に見えない資本」が重視されます。すなわち、知識資本、関係資本、信頼資本、評判資本、共感資本、文化資本などです。従って、これからの「成熟した資本主義」においては、この「ボランタリー経済」と「目に見えない資本」が重視されるようになるでしょう。
●ヘーゲルの弁証法には、「対立物の相互浸透の法則」というものもあります。これに従えば、ボランタリー経済とマネタリー経済は、今後、急速に融合していくでしょう。Amazonに草の根書評が組み込まれ、Linuxの周辺にシステム開発ビジネスが生まれることなどはその象徴です。また、社会起業家は、ボランタリー経済がマネタリー経済を取り込む動き、逆に、CSRは、マネタリー経済がボランタリー経済を取り込む動きです。
●しかし、これは、日本人には懐かしい話です。近江商人の「三方よし」、渋沢栄一の「右手に算盤、左手に論語」といった言葉にも象徴されるように、日本型経営とは、昔からボランタリー経済とマネタリー経済を融合させたものでした。それゆえ、日本型経営においては、「本業」そのものが社会貢献であると考えてきました。
●従って、これから、「社会の豊かさ」の定義も、「マネタリー経済」と「貨幣資本」という尺度だけでなく、この「ボランタリー経済」と「目に見えない資本」という尺度で測られるようになっていくでしょう。
●そのことを考えるならば、これから地域を活性化していくためには、「ボランタリー経済」を広げ、「目に見えない資本」を増大させていくことが、極めて重要な戦略になっていきます。
●そして、コ・クリエーション(共創)には、「志」が不可欠です。志が「ボランタリー経済」を活性化し、「目に見えない資本」を集めていくからです。そして、志が、素晴らしい出会いを生み、困難を乗り越えていく力を生み出します。
田坂さんのインスピレーショントークはここで終了。チームごとに感想を交し合います。ゆうきさんのチームでは、●自分が漠然と感じていたことを言葉にしてくださっていた。クリエイティブ・エコノミーがないのか、ぜひ田坂さんに質問してみたい。(えいすけさん) ●田舎にはまだまだ見えない資本がたくさんある。ただ、マネタリー経済を回していかないと、見えない資本も含めて持続しないのが難しいところ。(ゆうきさん)といった感想が出ました。
※田坂さんのトークの内容をさらに深く理解したい方は、ぜひ以下の著書をお読みください。
『目に見えない資本主義』
『未来を予見する5つの法則』
『使える弁証法』
『まず、世界観を変えよ』
『知性を磨く 「スーパージェネラリスト」の時代』