• 2018/01/29

目に見えない「世界のうねり」を感じて「新時代の波」を起こす――「ジェネレイティブ・インテンション(GI)」と「GIプロセス」

コクリ!プロジェクトが新たに打ち立てた概念「GI(ジェネレイティブ・インテンション)」とは、目に見えない「世界のうねり」のこと。そのGIを感じて、新時代の波を起こすのが「GIプロセス」です。

ジェネレイティブ・インテンション(GI)とは、目に見えない「世界のうねり」のこと

2017年、私たちは「GI(ジェネレイティブ・インテンション)」という新たな概念を打ち出しました。直訳すると、「立ち現れる未来の意図」。もう少しわかりやすく言えば、「目に見えない世界のうねり」のことです。

私たちコクリ!研究チームは、100年後から見て歴史が変わるために何が必要なのかを継続的に考えてきました。そうして気づいたのは、それぞれの時代を創り、大きく変えていくキーワードやコンセプトがあることです。例えば、ここ10年ほどで言えば、「サステナビリティ」「オープンソース」「AI」「ブロックチェーン」「アクティブ・ラーニング」などが、そうしたキーワード・コンセプトの一例に当たります。

また、私たちはこうしたキーワードやコンセプトが言語化される前に、「うねり」として密かに世界を変えつつあることにも気づきました。うねりとは、基本的には目に見えないため、ほとんどの人は気づいていないのですが、確実に進んでいて、絶対に後戻りしない世界・社会の変化のことです。うねりの多くは、みなが意識していない時点では言語化されません。たとえ言語化されても、なかなか広まりません。大きな波が立った後、振り返ってはじめて明らかになり、ネーミングされたり、その名前が広まったりするのです。これを私たちは「ジェネレイティブ・インテンション(GI)」と呼んでいます。

これはGIプロセスを図像的に表現したものです

「波」というのは、時代を変えるようなイノベーションや画期的な動きのことです。例えばいまなら、AirbnbやUber、あるいは自動運転車やGoogle Homeなどが目立つ波と言えるでしょう。職場にはテレワーク、社内託児施設といった波が立っていますし、社会にはこども食堂、イクメンなどの波が見えます。私たちは、AirbnbやUberなどの波が大きくなる前から、何かを共有することで、共有した人々が互いに幸せになる経済を求めるうねりがあったと考えています。そもそもGIがあって、そのGIにいち早く反応した方々がAirbnbやUberといった「プロトタイプ」のビジネスを起こして成功させ、その後でGIに「シェアリングエコノミー」という名前がついて、ようやくうねり=GIの存在が顕在化したのです。

私たちは、そうした時代を照らすコンセプトやキーワードが、GIのなかからどのように誕生し、どうやって社会を変えていくのかを探究しています。そのなかで、GIを多様な皆さんと探究し、この目に見えない「世界のうねり」を感じ、「新時代の波」を起こしていく仕組みを発明しました。それが「GIプロセス」です。

「キーワード・コンセプト」「プロトタイプ」「GI」を行き来することが重要だと考えている

では、どうすればGIプロセスを探求できるのでしょうか。私たちは、いままさにその方法を探求している真っ最中です。ここでは現状の仮説をお伝えしたいと思います。

(1)GIを感じ取る

まず、何はともあれ、現代社会で大きくなってきているGIを感じ取る必要があります。GIは、世の中にある「願い」や「苦しみ」、「葛藤」や「板挟み」などのなかから生まれてきます。そのうねりは、しばらくは言葉や概念にはならず、いわば「集合的無意識」の状態にあります。GIプロセスでは、そのGIの声なきエネルギーを感じ取ることが最も重要です。そのためには、単に頭で考えるのではなく、自分自身や周囲の人々の「身体の声」に耳を澄ましたり、誰かが語る「ストーリー」に没入したりする必要があります。身体が感じる知性を大事にして、個人や社会の行き詰まりの下にある大きなうねりを感じ取るのです。そうして深く潜った先に、ようやくGIらしきものが少しずつ見えてくるのです。

(2)ネーミングして広める

GIをある程度感じ取ることができたら、次に「キーワード」「コンセプト」を考えたり、「プロトタイプ」を作ったりしていきます。うねりを的確に捉えたキーワードやコンセプトは、シェアリングエコノミーのように、多くの人が共感し、納得できる表現になるはずです。そうした言葉を生み出せたら、きっと多くの人を新たな時代に導くことができるでしょう。それどころか、優れたキーワード・コンセプトを創造できれば、自分たちでうねりの方向を多少は舵取りすることも可能ではないかと思っています。また、キーワード・コンセプトを生み出す際は、歴史やシステムなどに目を向ける必要もあるでしょう。

例えば、最近のキーワードの1つに「第二町民」があります。第二町民とは、ある地域の外部に住んでいるのですが、その地域の町民に近い存在として、その地域に関わる人のことです。いま、日本中に第二町民が増えています。実は、この第二町民とほぼ同じ意味の言葉に「信託市民」があります。信託市民は、数十年前に学問の世界で生まれた概念ですが、この言葉は当時、まったく浸透しませんでした。それが「第二町民」と名付けられた途端、日本中に広まったのです。もちろん、これはネーミングだけの問題ではなく、まだGIが顕在化するにはタイミングが早かったのかもしれません。とはいえ、名前の影響は決して少なくないと私たちは考えています。

(3)プロトタイピングで新たな波を起こす

また、キーワード・コンセプトを考える一方で、プロトタイプをつくり、実証実験を行っていくことも大切です。もしプロトタイピングが成功すれば、感じ取ったGIやキーワード・コンセプトが的確だという何よりの証拠になりますし、自分の手で波を起こすこともできます。

(4)キーワード/コンセプト、プロトタイプ、GIを行き来する

しかし、これは言うは易し、行うは難しで、キーワード・コンセプトのネーミングもプロトタイピングも決して簡単なことではありません。そもそも、どのキーワード・コンセプトやプロトタイプが正解なのかは、誰にもわからないのです。目の前が見えないなかで、進んでいくほかにありません。ネーミングやプロトタイピングがすぐに成功することはほとんどないでしょう。

この3つを行き来することを「GI三角形」と呼びます。

そこで、私たちはいま、GIセンシング・ネーミング・プロトタイピングをかわるがわる行き来することを「GIプロセス」の方法論として定め、その実証実験を始めています。ネーミングやプロトタイピングをある程度進めてから、改めてGIセンシングに戻れば、GIのエネルギーの形をより明確に捉えられるようになるはずです。また、その上で再びネーミングやプロトタイピングを進めていけば、さらに的確なキーワード・コンセプト、さらに実効的なプロトタイプを生み出せるのではないかと考えています。この方法論はまだ仮説にすぎませんが、現在進めている実証実験では手応えを感じています。近いうちに、皆さんに続報をお伝えできるはずです。

5人1組で身体ワークをして、自分や仲間たちの身体に耳を澄ましています。 より多くのメンバーが言葉を一切使わずに、体の動きだけである状況について演劇的に表現していくワーク「ソーシャル・プレゼンシング・シアター(SPT)」に取り組むこともあります。
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