• 2019/10/03
  • Edit by HARUMA YONEKAWA
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まちのひとたちが「外とつながりたい」と思うことが関係人口づくりの出発点――関係人口インタビュー(3)大宮透さん

「コクリ!的関係人口」を考えたい! 私たちはそう思って、長野小布施町でまちづくりを続け、「小布施若者会議」などに取り組んできた大宮透さんに、関係人口について詳しく伺いました。

「コクリ!的関係人口」を考えたい! そのためにはまず、関係人口を深く考える皆さんにお話を伺おう。そうして、私たちは「関係人口インタビュージャーニー」を始めました。第3弾は、「小布施若者会議」を立ち上げるなど、長野県小布施町でまちづくりを続けているとおるちゃん(大宮透さん)にお話を伺いました。※インタビュー:三田愛

※私たちが考える「コ・クリエーション型関係人口」の記事はこちらです!
「コ・クリエーション型関係人口」で、予想だにしない未来を生み出そう!

〈コクリ!をご存じない皆さんへ〉 コクリ!プロジェクトとは何か? なぜ私たちが共創型関係人口を考えているのか?

ごく簡単に言うと、コクリ!プロジェクトは、コ・クリエーション(共創)プロセスを使って、地域や社会に「大転換」を起こそうとする取り組みです。コ・クリエーションプロセスでは、自分や仲間の「根っこ」とつながること、そして自己変容を重視します。参加者全員が対等な関係性で、仲間とともに、恐れを超えて未知に踏み出し、自分を変えていきます。自身の身体の声に耳を傾ける身体ワークや、自分を巡る大きな環に想いを馳せるワークなどを通じて、集合的無意識のなかに次の時代のうねりを感じ、自分たちが信じる世界を体現していくのです。その結果、コ・クリエーションでは、単なるコラボレーションとはまったく違う成果が出てきます。地域や社会に「想定外の変容」が起こるのです。コクリ!プロジェクトは、さまざまな場にコ・クリエーションを起こすことで、地域や社会を大きく変えようと試みています。なお、もっと詳しいことはこれらの記事に書いてあります。

私(三田愛)が地域で活動を始めたのは2011年ですが、そのとき私は、深く関わった熊本県南小国町で「第二町民」の創出に関わりました。また同時期に、やはりコクリ!と深い関わりがある島根県の海士町、長野県の小布施町にも第二町民が増えてきました。第二町民というのは、最近「関係人口」と呼ばれている人たちとほぼ一緒です。つまり、コクリ!では、2011年頃から関係人口の創出に携わってきたのです。その私たちから見ると、関係人口には大きな可能性を感じる一方で、不安や危惧も感じています。特に心配しているのは、関係人口と名付けられる前からあった大切なものや想いが損なわれることです。

その不安や危惧を振り払い、「良い関係人口づくりとは何か?」「共創型関係人口とは何か?」をもっと深く考えたい。そう思って、専門家のお二人に続き、地域側の3人にお話を伺いました。地域側の1人目は、長野県小布施町でまちづくりを頑張っているとおるちゃん(大宮透さん)です。

まちの人たちと外の人たちが対等な関係で進めるとうまくいく

―― 良い関係人口と悪い関係人口について、とおるちゃんはどう思いますか?

最近、長野県内のいくつか地域の関係人口づくりの取り組みをお手伝いする機会がありました。それで感じたのは、まちの人たちが、外の人たちと「つながりたい」「友達をつくりたい」「一緒に何かをやりたい」と思わない限り、関係人口づくりはうまく続かないな、ということです。

とおるちゃん(大宮透さん)

特に対照的だった2つの地域がありました。1つは、まちの人たちの要望で、東京などでフリーランスとして活動する方々を呼んで、関係人口づくりを始めました。集ったのは「多拠点で暮らしたい」「自分のやりたいことを試せる実証実験の場を探している」など、それぞれ想いやアイデアを持った方々。彼らがまちの人たちと一緒になって、対等な関係で何ができるかを考えていったんです。その結果、現在は全員がまちのアドバイザーとなり、部活のように頻繁に集まっています。先日も都市の皆さんが家族連れでまちを訪れ、花見をしながら作戦会議をしていました。

もう1つのまちは、まちの方々が主体的に動きにくい事情もあって、都市側の方々がオーナーシップを持つ形でプロジェクトを立ち上げました。ところがこちらは、結果的にまちの方々が疲弊してしまったんです。なぜかというと、都市側の皆さんがオーナーシップを持って、まちの課題解決のための企画を立てる一方で、まちの皆さんは、その企画を実行するための準備や調整などを行う、という関係になってしまったから。そうすると、まちの方々が振り回されてしまうんですね。企画のピントが少しズレていたりしても、まちの皆さんは「せっかくだからやろう」と頑張るんですよ。こうなると、特にまちの皆さんは苦しい。

この2つのまちを見ていて、「関係人口づくりで大事なのは、まちの皆さんがオーナーシップを持つことだ」と悟りました。中心にまちの皆さんが立っているか、あるいはまちと都市の皆さんが対等な関係で関わっている必要があると思うんです。そうしないと、関係人口づくりは長続きしません。そして、多くの場合、まちの皆さんがオーナーシップを持つ原動力は、「外の人たちとつながりたい」とか、「友達をつくりたい」とか、「外の人たちと一緒に何かをやりたい」といった気持ちです。こうした気持ちが、関係人口づくりの出発点になるんですね。

まず友達になること、関係をつくることを目指す

―― 小布施若者会議ではどうしているんですか?

小布施若者会議は、この小布施町で、新しい社会モデルやライフスタイルの実現を目指す、35歳以下の若者によるプロジェクト型コミュニティなんですが、最近はコミュニティ立ち上げのとき、参加してくれる方々に次のようなことを伝えています。「プロジェクトがうまくいかなくても気にしなくていいし、プロジェクトを無理に続けようとしなくてもいい。みんなと出会ったことに一番の価値があるんだから」。なぜなら、最初にそう言っておかないと、真面目に取り組もうとしてくれる参加者ほどプロジェクトを無理に続けて疲弊し、小布施から離れていってしまうからです。

小布施若者会議

もちろん、プロジェクトがうまくいくのはいいことなんですが、それよりも大事なのは、まず友達になること、関係をつくることだと思っています。実際、若者会議に参加した方々が、2~3年後に「小布施で実証実験させてもらえませんか?」「小布施で研修できませんか?」などと声をかけてくれることがよくあります。目先の成果にとらわれない信頼関係ができていると、こうしてあとでお互いに活かし合うこともできるんです。

―― 移住についてはどう思いますか?

関係人口づくりの取り組みがきっかけになって移住を選択してくれる方々も増えてきました。僕自身がそういった取り組みがきっかけで移住してきた一人ですし、最近では観光や教育、環境などのテーマで事業を立ち上げたいと移住してきてくれた方々もいます。移住する方は、かなり真剣にまちのことを考えてくれていて、多くの方がオーナーシップを持って、まちの変容を進めてくれています。ただ、だからといって、移住を増やさなくちゃならないとはあまり思っていません。そもそも小布施若者会議を続けてきたのも、観光以上・住民未満の人たちを増やしたいと思ってのこと。やはり、小布施と関わってくれる方が増えることが一番です。

自宅バーベキューなどから生まれる「ゆるいつながり」にも可能性がある

―― 他にどういうタイプの関係人口の方がいますか?

愛ちゃんも知っているカズさん(中村一浩さん)まゆちゃん(正能茉優さん)みたいに、新規事業の実践フィールドとして地域と深く関わりをつくっていくタイプの方もいます。たとえば、カズさんは、最初は「小布施インキュベーションキャンプ(OIC)」を立ち上げるという目的で、小布施を頻繁に訪れるようになりました。当初は僕も立ち上げに関わらせてもらって、カズさんとまちの皆さんをつなぐお手伝いをしたのですが、いまは独自に多くのまちの方々と深く信頼関係を築かれていて、継続的に町に関わっていただいています。ビジネス上の関わりから始まりましたが、いまや完全な関係人口ですね。ビジネス的な要素も含めた形で地域と接点を持っていただく方々は、やりたいことが明確で、ビジョンさえ共有できれば協働しやすいです。それに、地域にあまりないタイプのスキルや優れた資源を持っていることが多く、その点でもありがたい存在です。

それから、個人的には、「カジュアルな関係人口づくりの仕掛け」も増やしたいと思っています。たとえば、小布施では年に一度「小布施見にマラソン」が開催されているんですが、その当日、僕は必ず自宅でバーベキューをするんです。そうすると、毎年マラソンに参加する友達たちが、またその友達を連れてやってくる。そうして、そこで「ゆるいつながり」が生まれます。こういうゆるいつながりが一方では重要で、意図的な関係人口づくりなどでは生み出せない関係ができることがあるんです。偶然が偶然を呼んで、ひょんなことからビジネスが立ち上がったりすることもあります。自分自身が楽しみながら、こういう場を無理なく作っていくことが、とても大切だと思っています。

ただ、こういう機会は、僕一人で大きくするのは難しい。その意味で、まちの受け皿をもっと大きくしたいですね。たとえば、小布施見にマラソンのときにバーベキューをする家が増えたら、それだけでゆるいつながりも増えるはずです。関係人口を増やすには、意外と「まちの受け皿づくり」がポイントなのかなという気がします。

一番大事なのは地域内外の人がビジョンを共有していること

―― 結局、とおるちゃんは関係人口についてどう思っているんですか?

関係人口づくりで本当に一番大事なのは、「地域内外の人の目線が合っていて、ビジョンを共有している」ことだと思います。まちの人たちが、外の人たちとつながりたい、友達をつくりたい、一緒に何かをやりたい、と思うことは大事ですし、まちの人と外の人が対等な立場で進めていくことも大事ですけど、一番じゃない。最も肝心なのは、ビジョンを打ち立て、共有することです。このときビジョンを立てるのは、まちの人でも外の人でもいいんですよ。その人がまちから一定の信頼を得ていて、まちの人たちと対等な関係にあり、その人のビジョンとやりたいことにまちの人たちが共感することができれば、外の人でもいいんです。

たとえば、カズさんの小布施インキュベーションキャンプ(OIC)は、まさに外からやりたいことを持ち込んでビジョンを立てた事例です。このようなケースなら、必ずしもまちの人が中心である必要はないのかな、と思いますね。地域の人たちとしても、やりたいことが明確で、地域にとってプラスになるのであれば、かえって協働しやすいと思います。

それから、カズさんもまゆちゃんもそうですけど、継続的な取り組みを前提として、自分たちでネットワークを築く姿勢がある人たちです。この意識があるかどうかは、大きな違いだと思いますね。そういう意識を持った関係人口は、地域にとって宝なんじゃないでしょうか。ただ、そういう人たちも、最初から一人で地域との関係づくりを進めていけるわけではありません。指出さんがおっしゃる「関係案内所」のようなところ、外の人を最初に地域とつなぐ場や役割は欠かせません。

以上をまとめると、こんな感じになりますね。

●良い関係人口を生み出したいなら、地元の人間が「つながりたい」「友達をつくりたい」「一緒に何かをやりたい」と思うこと、外の人との協働にウェルカムであることが大切です。
●地域中心で進めるにしても、外の人が中心に立つにしても、みんなで目線を合わせ、ビジョンを共有することが必須です。
●外の人が何かを提案して進めていく場合、地元の人がそのビジョンに共感でき、乗り気になれるプロジェクト、地元のニーズがあるプロジェクトであることが大切です。
●指出さんが提案する「関係案内所」のように、外の人を最初につなげる場や役割が必要です。一方で、関係人口側が、長期的な視点で地域に関わり、独自にネットワークを広げようとする姿勢も欠かせません。
●一方で、カジュアルな関係人口づくりの仕掛けにも効果があります。

大宮透さん
1988年生まれ。東京大学大学院工学系研究科修了(都市工学修士)。2013年より長野県小布施町に移住し、法政大学・小布施町地域創造研究所(現・慶應SDM・小布施町ソーシャルデザインセンター)の主任研究員として地域づくりの仕事をはじめる。地域内外の様々なアクターの恊働を推進し、新しいプロジェクト構想のコーディネーターとしての役割を担う。小布施では、特に都会の若い世代をターゲットにした「小布施若者会議」や「HLAB OBUSE」などの取り組みを仕掛け、まちに多様な若者が集う環境づくりを推進している。

 

「問題になる前」に取り組んで、世の中の「生きにくさ」を減らしたい――「夢のワーク」と「コクリ!研究合宿」

 

2018年6月の「コクリ!研究合宿@フフ山梨」を経て、なおこさんは、問題になる前に挑戦しないと、世の中の生きにくさを減らすことはできないことに気づいて「家族計画建築」を思いつき、「家と家族についてのラーニングコミュニティ」を立ち上げることを決心しました。

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