• 2015/05/07
  • Edit by HARUMA YONEKAWA
  • Photo by KENICHI AIKAWA

第1回コクリ!キャンプレポート(2) “根っこの想い”を語り合う

コクリ!キャンプの模様、第2部は前半の山場・ストーリーテリング

2015年2月17日、恵比寿ガーデンホールにて“第1回コクリ!キャンプ”を開催しました。ここでは、その内容を「全体視点」と「個別視点」でご紹介していきます。なお、個別視点では、参加者の一人であり、ラボメンバーでもある「ゆうきさん」から見たコクリ!キャンプの模様をお伝えします。第2部は前半の山場・ストーリーテリングです。

山で出会うと挨拶するのに、満員電車だといがみ合うのはなぜか

ストーリーテリング(1)海士町・べっくさんの話

田坂さんの素晴らしいトークの後は、前半の山場といえる“ストーリーテリング”です。ストーリーテリングでは、自分と繋がり、仲間と繋がるために、1対1で対話をして、自分が大事にしている“根っこの想い”に触れ、仲間の“根っこの想い”に触れていただきます。まずはファシリテーターの二人が、皆の前で二人の方のストーリーを伺いました。一人目は、島根県海士町からいらっしゃった株式会社巡の輪 代表取締役のべっくさん(阿部裕志さん)です。

島根県海士町からいらっしゃった株式会社巡の輪 代表取締役のべっくさん(阿部裕志さん)

べっくさんは、今や全国的に有名になった海士町の地域づくりの中心人物のお一人。巡の輪の活動を映像と語りで簡単にご紹介していただいた後で、ストーリーテリングの質問に一つずつ答えていただきました。べっくさんのお話で特に印象的だったのは次のことです。

●学生時代、人々は山で出会えば必ず挨拶するのに、満員電車だといがみ合うのはなぜかと考えた。それは社会の仕組みのせいだ。それなら仕組みを変えていきたい。その想いが、今の海士町での活動に繋がっている。
●人と人、人と自然が共存している田舎で、続く未来に向けて行動する仲間を増やしたい。これが“根っこの想い”。
●今日ここで、田坂さんのトークを聞いて、「田舎の見えない価値、見えない資本を形にして教える場を創りたい」と強く思った。

評価から解放されれば、仕事も楽しめるようになる

ストーリーテリング(2)カヤック・ヤナさんの話

続いては、面白法人カヤックCEOのヤナさん(柳澤大輔さん)のストーリーテリングです。「日本一面白い会社」を立ち上げ、大きくしてきたヤナさんは、一方で「カマコンバレー」にも携わっています。カマコンバレーとは、「ITの地産地消」を目指し、鎌倉を良くするために活動している人をITで全力支援する活動組織で、例えば鎌倉の街の落書きを一人で消し続けてきた女性に役立つシステムを開発するプロジェクトなどを立ち上げています。

面白法人カヤックCEOのヤナさん(柳澤大輔さん)

今回は主に、カマコンバレーへの想いについて伺いました。ヤナさんのお話で印象に残ったのは次のことでした。

●カマコンバレーは、鎌倉の街を楽しく好きになろうとする人たちの集まりで、ブレインストーミングでアイデアを出し合うことを重視している。
●カマコンバレーを続けている“根っこの想い”は、涙が出るくらい面白いこと、楽しいことが、必ず月に3回くらい起こるから。
●カマコンバレーに参加している人のなかには、仕事が楽しめるようになったという声が多い。企業は評価をする場だから、企業でだけ働いているとどうしても鬱々とする人が出てくる。その点、カマコンバレーは評価が生まれないから、評価から自由になれる。それが、多くの人の仕事にも良い影響を与えているのではないか。

まったく違う人生の二人が、腹を割って話し合う

ストーリーテリング(3)ペアインタビュー

べっくさんとヤナさんのストーリーテリングが終わったところで、今度は全員が1対1で対話する“ペアインタビュー”をしていきます。なお、ここからは参加者の一人「ゆうきさん」の視点を中心にコクリ!キャンプを紹介していきます。

株式会社リクルートホールディングス 常務執行役員の北村吉弘さん

なお、ゆうきさんとストーリーテリングしたのは、「きたっちさん」です。分かりやすくするために、ここでお二人のプロフィールを簡単にご紹介しておきます。ゆうきさんは、北里有紀さん(有限会社御客屋旅館 代表取締役/NPO法人南小国まちづくり研究会みなりんく 代表理事)。熊本県黒川温泉で代々続く旅館を経営しながら、地元・南小国町の町づくりに奔走する中心メンバーの一人です。一方のきたっちさんは、株式会社リクルートライフスタイル代表取締役社長(2015年4月より、株式会社リクルートホールディングス 常務執行役員)の北村吉弘さんです。普段はまったく異なる場、ポジションにいるお二人の対話を、かいつまんでご紹介します。

ゆうきさんのストーリーテリング
●黒川温泉は、南小国町のなかでは「浮いた存在」。だからこそ、人一倍南小国町のために役立ちたいと思っている。例えば、南小国町の特産品を紹介する場を黒川に設けるなどの活動をしている。それで町の人からありがとうと言われると嬉しい。
●田舎の良さを教えてくれるのは、地域外の人たち。だから、地域が地域外の人たちと触れ合う場を増やすことも大事だと思っている。NPO法人みなりんくでは、仲間たちと共に、そのチャンスを増やす活動を積極的に行っている。
●南小国町のある阿蘇の草原を大切にしたい。そのために、赤牛を飼うなどの活動を進めていきたいと思っている。今回のコクリ!キャンプでは、それを応援してくれる仲間を見つけたい。

きたっちさんのストーリーテリング
●大学時代は理工学部で、研究者や製薬メーカーに進む仲間が多かった。でも、自分は働くことに飽きたらマズイと思い、飽きない仕事・飽きない会社を探した。それがリクルートだった。先輩たちの姿を見て、ここなら働くことに夢中になれると思ったし、実際にそうだった。
●社長になって大事にしてきたのは、「係」という考え方。社内の皆さんには、いつも「人は誰しも係があるから、自分なりの係を見つけてほしい」と話してきた。例えば、会議のときに椅子と机を直す係などでもまったく問題ない。
●社内の部活動を復活させた。ただし、マネジャーが部長になるのは禁止。すると、マネジャーという係を務める人も社内に増える。このような言葉や施策をきっかけに、自分の役割を見つけ、主体的に行動する人が増えていることが嬉しい。

60組以上のペアで深く行われたストーリーテリング

残念ながら、他の方々のストーリーテリングは聞けませんでしたが、このような対話が60組以上のペアで深く行われました。その後は、再び4~6名のチームに戻り、一人ひとりが改めて自身の根っこの想いをまとめた上で、自分がこれからここで話したい問いやテーマを交し合いました。ゆうきさんのチームでは、次のような話が出ました。

●阿蘇の草原は1000年前から人々が守ってきたもの。私の旅館は300年前から受け継がれてきたもの。悠久の歴史を受け継ぎ、次代に渡す。これが根っこの想い。そのときに、想いをどのように伝播していけばよいのかを知りたい。(ゆうきさん)
●もっと良いデザイナーになりたい。それには「素直」になることが大事だと思う。我を忘れて創っていると、素直になって、良いものが創れる。1000年後も残るような素直すぎるイノベーションを生むことができないだろうか。(えいすけさん・太刀川英輔さん/nosigner)
●やはり周囲の人々が語ってくれる人生が面白い。世代間交流は最高だと再確認した。(良ちゃん・市村良三さん/長野県小布施町長)
●誰にも、何らかの「係」があるはずだというのが根っこの想い。またこの場では、二元論ではなく、次に何がありうるかという「次元論」で話していきたい。(きたっちさん)

えいすけさん・太刀川英輔さん/nosigner

キャンプログによると、ストーリーテリングによって、根っこの想いを再確認し、進む道に迷いがなくなった参加者の方がたくさんいます。深く生々しい本音を対話したことで、温かく本質的な出会いの場になったという方も少なくありません。勇気を得た、未来に向かう力を得たという感想も、いくつも見られます。まさに参加者が深くつながり、関係の質を一気に高める場になったと感じています。

※なお、コクリ!キャンプは「自分をさらけ出す場」ですので、皆がプライベートな話、生々しい話をする場面も多いのですが、そのような内容はWeb上ではできるだけ控えていますのでご了承ください。

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