• 2016/04/25
  • Edit by HARUMA YONEKAWA
  • Photo by KENICHI AIKAWA

コクリ!キャンプで話し合った「問い」(3)日本を変える“未来自治体”の仕様書とは?

数名のメンバーが、第2回コクリ!キャンプで語り合った「問い」についてご紹介していきます。

コクリ!キャンプで話し合った「問い」

第2回コクリ!キャンプは、互いに深くつながった上で、「これから日本に共創型社会を創っていくために、いま解決したい社会的課題」を皆で出し合い、その本質や解決方法などを皆で対話する場でした。では、コクリ!メンバーの方々は、実際にコクリ!キャンプでどのような問いを出したのでしょうか。なぜその問いを投げ、どういった対話をしたのでしょうか。何人かの方にお話を伺いました。最後のお一人は、富山県氷見市長・本川祐治郎さんです。

Q:日本を変える“未来自治体”の仕様書とは?

私が第2回コクリ!キャンプで出した問いは、「日本を変える“未来自治体”の仕様書づくり」です。長期視点で見たとき、氷見市や他の自治体が抱えるさまざまな課題をできるだけ多く解決するためにはどのような自治体になっていけばよいのかを、ぜひ皆さんと一緒に考えたい、という意図で提案しました。

今回は、「皆さんに地域の課題を解決していただこう」と最初から思っていた

コクリ!キャンプには、昨年の第1回に続いて参加しました。昨年は異業種交流会に近い気分で参加したのですが、今回は最初から、「ここに集まる皆さんに、未来や地域の課題を解決していただこう」と考えていました。そうした相談をできる方々が集まる場であることも、「コクリ!キャンプを社会実験がおこる場にしたい」という愛ちゃん(三田愛さん)の想いも知っていましたから。それで、実は事前に、「成熟した民主主義社会とはどのようなものでしょうか?」という問いを用意していました。

富山県氷見市長・本川祐治郎さん(左)

序盤で特に印象的だったのは、米良さん(米良はるかさん)とお話ししたことです。米良さんはお母さんが富山県出身で、富山を応援したいとおっしゃってくださったのですが、同時に、これからAIの時代が来て、おそらくは行政も含めて、なくなってしまう仕事がたくさん出るだろうと強調されていました。このお話を伺って、私は問いを変えました。成熟した民主主義ではなく、AIが当たり前になるような「未来自治体の仕様書」を、皆さんと一緒に考えてみるほうがワクワク面白いのではないかと思ったのです。

行政の仕事は、“未来からの宿題”のオンパレード

この問いの背景には、ふだんの仕事での想いがあります。実を言えば、行政の仕事は“未来からの宿題”のオンパレードです。たとえば、私が市長に就任してからのこの3年だけでも、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されましたし、富山湾は「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟しました。東京でのオリンピック・パラリンピック開催が決定し、富山でのG7環境大臣会合も決まりました。PM2.5やイノシシ被害なども行政課題になるなか、これらのチャンスや脅威をいかに柔軟に、いかに専門性高く対応していけるかが、市長である私の大きな課題の一つです。新しい課題には市役所内に専門家がいないケースも多く、市民の皆さん、あるいは日本や世界の皆さんに解決策を求めていく時代が来ると、以前から思っていました。氷見市の問題、各地域の問題のなかには、日本や世界でまだ誰も解けていないものが多く含まれていますから、多くの方々の知恵を結集してこれらを解決していくことには、大きな意味・意義があります。

「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟した富山湾の絶景

コクリ!キャンプには、私たちの悩みの解決策を一緒に考えてくださる方々が集まっている。「行政外の多様な頭脳への相談」という新たな一歩を踏み出す絶好のチャンスだと思いました。

問いの答えは「超分散協調&分散型相互運用の自治体」

私が掲げた「日本を変える“未来自治体”の仕様書づくり」という問いには、行政4名、企業4名、教育1名、NPO1名と、さまざまな立場の10名の方々がバランスよく集まりました。私も含めた行政側は、ふだん企業の方々の考えに触れることが少なく、企業側の方々は行政のことに触れる機会が少ない。互いに良い機会になったと、皆さん口々におっしゃっていました。嬉しいことです。

「日本を変える“未来自治体”の仕様書づくり」について対話したチームの皆さん

このチームで1~2時間ほど対話して、いったんまとまった結論を一言で申し上げると、未来自治体とは「超分散協調&分散型相互運用の自治体」ではないかということです。私たちが発見したのは、「そういえば、世界政府はないよね」ということでした。つまり、世界は国や企業、NPOなどの超分散協調&分散型相互運用のもとで成り立っているわけです。同様に、地域も自治体だけでなく、その一部をNPOや企業などが超分散協調&分散型相互運用できるのではないかというのが、私たちのアイデアです。そして、そのなかにあっても、行政は全体変革のリーダーシップを発揮する存在になるべきだと、特に企業側の方々がおっしゃっていました。あるいは、公金を投じる事業を常に競争にかけ、行政とNPOが対等に渡りあいながら、パブリックを担っていくという考えも出されていました。

2社が組んで氷見市と一緒により大きく可能性を広げられないだろうか

他にも面白い話がありました。チーム内に、Yahoo! JAPANの佐竹さん(佐竹正範さん)、リクルートホールディングスの麻生さん(麻生要一さん)がいらっしゃったのですが、実は佐竹さんも麻生さんも、氷見市とは少々つながりがあります。佐竹さんには、氷見の限界集落でタブレットを使ってショッピングするNPO活動に、幾度か来ていただいたことがあります。麻生さんも、やはり氷見の限界集落で行われたプロジェクトに関わっていらっしゃいました。この偶然をきっかけに話が盛り上がって、たとえば2社が組んで氷見市と一緒により大きく可能性を広げられないだろうかという話題になりました。

多様な10人で「日本を変える“未来自治体”の仕様書づくり」を対話した

もちろん現実には、いくつもの課題や障壁があります。たとえば、Yahoo! JAPANさんとリクルートホールディングスさんが共同で動くことができるかといえば、現在は個人情報上の制約があって、互いのリソースを組み合わせることができません。そこに来てようやく、チーム内で未来のキーワードとして出されたものの一つ、「個人情報特区の可能性」という言葉の意味が納得でき、次の一歩が見えてきました。これは大変重要なことだと思います。

多様な10人で「日本を変える“未来自治体”の仕様書づくり」を対話した

GWに、コクリ!キャンプの仲間たちとリアルキャンプをしたい

コクリ!キャンプは大変面白かったのですが、いかんせんこのメンバーで半日は短かった。未来自治体についても、さらに深く掘り下げていきたい。自然とそんな気持ちになりました。このチームの多様な10人が再び集まって、さらに対話を進めていけば、数え切れないほどのアイデアが生まれ、氷見市の課題がどんどん解決できるのではないかと感じています。また、対話のなかでは、未来自治体の仕様をさらに細かく詰めていって、「10年後の未来自治体の仕様書」を出版しても面白いのではないかとのアイデアまで飛び出していました。

そこで、私は、「日本を変える“未来自治体”の仕様書づくり」を交し合った10名を中心にして、コクリ!メンバーの方々に氷見市に来ていただき、「リアルキャンプ」を行うことを決めました。ちょうどゴールデンウィークに地元の獅子舞のお祭りがありますので、それを観ていただける日程(5/2~3)にしました。こうしたチャレンジを経て、皆さんの「クリエイティビティ」をより多く発揮していただきながら、愛する土地の未来をぜひ一緒に創っていけたらと思っています。

本川祐治郎(ほんがわ・ゆうじろう)さん
富山県氷見市長

1967年、富山県生まれ。早稲田大学商学部卒業。衆議員議員・武藤嘉文事務所で私設秘書を務めた後、帰郷。高岡商工会議所で地域振興事業に関わる中で、協働コーディネート・ファシリテーションの必要性に目覚め、専門を磨く。2000年からは家業の経営に従事。その後、「政治・中間支援・民間」の3つのセクターでの経験を活かし経営士登録。プロファシリテーターとして起業し、地域・企業のコンサルティングを行う。2013年4月、富山県氷見市長選に無所属で出馬し当選。「つぶやきをかたちに」を信条にフューチャーセンターを備えた学校体育館リノベーション庁舎を完成に導き、「市民と行政がともに政策を創る」行政運営に着手している。

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