• 2017/05/19
  • Edit by HARUMA YONEKAWA
  • Photo by RYOSUKE KUSAKARI

コクリ!の深い話(5) 僕は働き方改革も地方創生も楽観的に考えている ●野村恭彦さん・後編

イノベーション・ファシリテーターの野村恭彦さんに、地域づくりとファシリテーションとイノベーションについて伺いました。〈後編〉

コクリ!プロジェクトやコ・クリエーションに関係する深い話をさまざまな方にインタビューしていくシリーズの第5回です。イノベーション・ファシリテーターの野村恭彦さん(株式会社フューチャーセッションズ代表取締役)に、地域づくりとファシリテーションとイノベーションにについて伺いました。その後編をお送りします。聞き手は、賢州さん(嘉村賢州さん)、直樹さん(太田直樹さん)、愛ちゃん(三田愛さん)の3人です。

「そうなるに決まっている未来」を前提に、一人ひとりが勝手にイノベーションを起こしていけばいい

――― 日本の将来をどのように考えていますか?(賢州)

僕は基本的に働き方改革も地方創生も、いろいろと楽観的に考えています。なぜかというと、資本がない人でも、ミクロなイノベーションを次々に起こせるような時代になったからです。そして、たとえミクロであっても、そのイノベーションが優れていれば、社会に大きな影響を与えられるようになったからです。今や、資源のない個人やチームが世の中を動かすようなイノベーションを起こして、それを資源のある大組織が追いかける時代になったんです。それは、Uberなどネット企業を見れば、一目瞭然です。

イノベーション・ファシリテーター 野村恭彦さん

実は、僕が「渋谷をつなげる30人」プロジェクトでやっているのは、従来はサービスの「受け手」だった住民の皆さんを、サービスの「担い手」に変えるだけのことなんです。「この地域が住みよいから住んでいます」という方々を、「この地域に貢献するために住んでいます」という方々に変えているのです。それがなぜ効果的かというと、彼らが起こす小さなイノベーションにこそ価値や可能性があるからです。その地域にしかないものを自分たちで生み出してもらうことで、地域の価値を高めて、同時に地域をもっと好きになってもらう。それが本当の地域創生だと思うんです。そういう発想の転換を起こせる時代になっているんですね。

一方で僕は、今は企業の組織変革にはあまり期待していません。以前、企業の組織変革が重要だと思っていたのは、リソースを持っている大企業のマネジャーの皆さんが変わらないと、大きなイノベーションがなかなか起きなかったからです。彼らの多くは、依然として変わることができないでいます。今は誰でも簡単にチャレンジできる世界なのだから、十分なリソースや余裕がある彼らには、イノベーションを起こすチャンスがいくらでもあるんです。それなのに、「失敗したらマズい」といった心のバリアがあるために、なかなか一歩を踏み出せないでいるのです。

しかし、彼らがそうしている間に、時代は変わりました。資本の少ない個人やチームが起こした面白いイノベーションが、影響力を持ち、世界を動かしていくようになりました。事実、大きな資産を持たない僕らの近しい友人たちが、あらゆる領域でキャスティングボートを握り始めています。彼らがきっとどんどんイノベーションを起こしてくれるでしょう。ですから、大企業の方々が変われなくても、僕は何も心配していません。もちろん、大企業の皆さんにも変わってほしいと思っていますけどね。

むしろ僕が気にしているのは、キャスティングボートを握り始めている僕の友人たちに負けないことですね。僕自身がクリエイティブであり続けるために、今どうしたらよいのかをいつも考えています。たとえば、近い将来、おそらくファシリテーションが社会をどんどん変えていく世の中になると思いますが、そうなったときに賢州さんとトップ争いしていたいですね(笑)。

――― なぜそこまで楽観的になれるのでしょうか? その自信はどこから出てくるのでしょうか?(賢州)

楽観的なのは、一つは父の影響があると思います。僕の父はロケットの研究者でした。父は、「世界中の問題は宇宙が解決するから大丈夫だ」とよく語っていて、僕はすっかりそう思い込まされてきました。小さな頃から楽観的に育ってきたんですね。

もう一つは、これからは世の中がどんどん変わっていくからです。現代は、一人の人生のなかで何度もシステムチェンジが起こる時代です。AIやIoTが世界のシステムを大きく変えるのは、すでに自明のことなんです。僕はもう、みんながその前提に立って考えたり、動いたりしたほうがいいと思っています。たとえば、今後AIが発達したら、生産性が一気に高まり、確実に労働時間が短くなりますから、長時間労働の問題はなくなるかもしれませんよね。だから、長時間労働の問題だけを深く考えていても、時代はどんどん変わってしまうんです。

野村さんは2017年4月に開催した「コクリ!海士」でもファシリテーターの一人として活躍

また、テクノロジーが発展していけば、個人や小さなチームのイノベーションは、今後ますます影響力が高まっていくでしょう。それなら、変わらない方々を説得したり、変えようとしたりする必要はありません。僕は、それは無駄な努力だと思います。それよりも、たとえば将来「ギフトエコノミー」が本格的に到来したとき、どういった会社やビジネスが魅力的なのか、どのようなイノベーションが必要なのかを考えたほうがずっと有益なんです。僕は、そうなるに決まっている未来を前提に、一人ひとりが勝手にイノベーションを起こしていけばいいと思っています。

そうした社会で大事なのは、「それは自分が本当にやるべきことかどうか?」を判断することです。誰だって、本人が本気で決めたら、それはもう誰にも止められないからです。現在の企業では、アイデアを企画・提案して、上司や経営陣を説得する必要があります。しかし、個人や小さなチームで動くのなら、提案や説得の必要はありません。自分や仲間たちが意思決定さえすれば、あとは周囲に働きかけながら実行していくだけなんです。

みんなで新しい問いを生み出そう!

――― コクリ!プロジェクトに期待することは何ですか?(賢州)

これはコクリ!プロジェクトだけではないですが、「みんなで新しい問いを生み出そう!」と呼びかけたいですね。その成果として、「問い集」を作れたらいいと思うんです。「新しい問い」とは、社会課題に対する新たな切り口です。「答え」を提示するのではなく、創造的な「問い」を提示することで、社会のあらゆる構成メンバーが自分ゴトで考え、自分らしい答えを出していくことができる、そんな社会にしたいからです。コクリ!プロジェクトの皆さんにも、ぜひいろいろな問いを出していただきたいと思っています。

その上で、コクリ!プロジェクトには、新しい問いに対してステークホルダーを提供しあうネットワークになってもらえると嬉しいです。その意味では、コクリ!プロジェクトにはまだまだ、もっと大きなポテンシャルがあると思います。すでに1対1のつながりはいくつも生まれていますけど、それがまだ面としての有機的なつながりになっていない感じがするんです。もう少し関係性の融合度合いが高まっていけば、イノベーションが続々と起こるのではないでしょうか。たとえば、コクリチームとして一人ひとりが目指す自分ゴトの課題を持ち寄り、それをみんなで一気にブレークスルーしていくような集まりになれば、大きなコレクティブ・インパクトを生み出すことになるのではないでしょうか。みんなで未来社会の仮説を出しあいながら、バックキャストする(未来から振り返って現在の行動を考える)のも面白いかもしれません。

もっと言えば、コ・クリエーションの面白いところは特定のビジョンを定めず、即興的にどんどん変えていくところですよね。僕は、みんなでビジョンを高め合って、社会的なビジョンをアップデートしていく試みには興味があります。それを「コ・クリエーティブ・インパクト」と呼んでもいいかもしれませんね。とても面白そうです。

 

「問題になる前」に取り組んで、世の中の「生きにくさ」を減らしたい――「夢のワーク」と「コクリ!研究合宿」

 

2018年6月の「コクリ!研究合宿@フフ山梨」を経て、なおこさんは、問題になる前に挑戦しないと、世の中の生きにくさを減らすことはできないことに気づいて「家族計画建築」を思いつき、「家と家族についてのラーニングコミュニティ」を立ち上げることを決心しました。

 

コクリ!の深い話(13)知性主義と反知性主義を「同根」と捉えない限り、何も解決できないのではないか? ●ドミニク・チェンさん

 

「大きくならない都市をつくることもできるのでは」「ユーザーが場を発酵させて良い状態にしてくれたWebコミュニティをつくった」「精霊の声やものの声は聞こえる人には本当に聞こえている」といったお話を縦横無尽に伺っていきました。

 

コクリ!の深い話(12)AIが「持続可能で幸せに暮らせるのは地方分散型社会」だと予言した ●広井良典さん×日立京大ラボ

 

「AIを活用した未来シナリオ研究」を行っている京都大学教授の広井良典さんと日立京大ラボの加藤猛さん、福田幸二さんに、「日本の破局を防ぐには、10年ほどで“持続可能性の高い地方分散シナリオ”に持っていく必要がある」というお話を伺いました。

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