• 2019/11/03
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「地域のために」じゃない。「自分のために」やってきた――関係人口インタビュー(6)田村祥宏さん

「コクリ!的関係人口」を考えたい! 私たちはそう思って、「KUROKAWA WONDERLAND」や「横瀬クリエイティビティー・クラス」の中心に立ってきた田村祥宏さんに、関係人口について詳しく伺いました。

「コクリ!的関係人口」を考えたい! そのためにはまず、関係人口を深く考える皆さんにお話を伺おう。そうして、私たちは「関係人口インタビュージャーニー」を始めました。第6弾は、東京在住のクリエイターたちが自主プロジェクトとして制作した熊本県黒川温泉のWebコンテンツ「KUROKAWA WONDERLAND」や、埼玉県秩父郡横瀬町を舞台に、都内のクリエイターと地元住民、そして中学生を中心とした、社会全体での教育参加を実現するプログラム「横瀬クリエイティビティー・クラス」の中心に立ってきたフィルムディレクター / クリエイティブファシリテーターのやすくん(田村祥宏さん・株式会社イグジットフィルム 代表取締役)にお話を伺いました。 ※インタビュー:三田愛

〈コクリ!をご存じない皆さんへ〉 コクリ!プロジェクトとは何か? なぜ私たちが共創型関係人口を考えているのか?

ごく簡単に言うと、コクリ!プロジェクトは、コ・クリエーション(共創)プロセスを使って、地域や社会に「大転換」を起こそうとする取り組みです。コ・クリエーションプロセスでは、自分や仲間の「根っこ」とつながること、そして自己変容を重視します。参加者全員が対等な関係性で、仲間とともに、恐れを超えて未知に踏み出し、自分を変えていきます。自身の身体の声に耳を傾ける身体ワークや、自分を巡る大きな環に想いを馳せるワークなどを通じて、集合的無意識のなかに次の時代のうねりを感じ、自分たちが信じる世界を体現していくのです。その結果、コ・クリエーションでは、単なるコラボレーションとはまったく違う成果が出てきます。地域や社会に「想定外の変容」が起こるのです。コクリ!プロジェクトは、さまざまな場にコ・クリエーションを起こすことで、地域や社会を大きく変えようと試みています。なお、もっと詳しいことはこれらの記事に書いてあります

私(三田愛)が地域で活動を始めたのは2011年ですが、そのとき私は、深く関わった熊本県南小国町で「第二町民」の創出に関わりました。また同時期に、やはりコクリ!と深い関わりがある島根県の海士町、長野県の小布施町にも第二町民が増えてきました。第二町民というのは、最近「関係人口」と呼ばれている人たちとほぼ一緒です。つまり、コクリ!では、2011年頃から関係人口の創出に携わってきたのです。その私たちから見ると、関係人口には大きな可能性を感じる一方で、不安や危惧も感じています。特に心配しているのは、関係人口と名付けられる前からあった大切なものや想いが損なわれることです。

その不安や危惧を振り払い、「良い関係人口づくりとは何か?」「共創型関係人口とは何か?」をもっと深く考えたい。そう思って、専門家・地域側と聞いて、最後は都市側の方々にお話を伺いました。都市側の1人目は、「KUROKAWA WONDERLAND」や「横瀬クリエイティビティー・クラス」の中心に立ってきたフィルムディレクターのやすくん(田村祥宏さん・株式会社イグジットフィルム 代表取締役)です。

以前に「お金を超えた関係性」を結べていたことが KUROKAWA WONDERLANDの実現につながった

―― やすくんは、地域にどう関わってきたんですか?

最初に断っておきますが、僕はクライアントワークではないインデペンデントワークで、「地域のために」何か始めたことは一度もありません。黒川でも横瀬でも、「自分のために」やった。それは一貫してますね。

KUROKAWA WONDERLAND」に関して言えば、きっかけは僕たちのチームがドローンで空撮のポートフォリオを創ろうとしたことにあります。当時はまだドローン撮影が出始めの混迷期で、信頼感のある製品もなく、法整備もされておらず、最初はお台場で自作機の飛行を試したんですが、やはり都市部ということで、安全面からなかなかうまくいかなかった。その反省会で、阿蘇の山奥に暮らす黒川温泉のゆうきさん(北里有紀さん)に電話をして、お願いしたんです。「黒川でドローンの空撮って試せますか?」って。そうしたら、「一緒にやりたい!」と言ってきた。「やっていいよ」ではなく、「一緒にやりたい」と。心の奥で何かが動くような感覚を覚えました。本気で誰かのために何かをしようと思った時、「地域のために」のような動機は弱いと思ったんです。しかも資金持ち出しのインデペンデントプロジェクト、自分の”欲”を持ち込んで、持っているすべてを出し尽くさなくては勝てないと思いました。そうしてどんどん話が大きくなっていき(笑)、KUROKAWA WONDERLANDのプロジェクトが始まりました。

やすくん(田村祥宏さん)

黒川に関して言えば、プロジェクト以前に「お金を超えた関係性」を結べていたことが大きかったですね。コクリ!関連の仕事の撮影で黒川に何度か行ったときに、徹夜で編集作業をしていたら、ゆうきさんたちが2時間ごとに様子を見に来てくれて、ご飯の差し入れなんかをしてくれた。しかも、僕のことをカメラマンさんじゃなく、「やすくん」と呼んでくれたんです。そうやって業者扱いせず、仲間に入れてくれたのが嬉しかったし、居心地が良かった。あらかじめそんな関係性ができていました。そして新たな仲間たちにも、黒川の皆さんが同じようなことを追体験させてくれたからこそ、東京の仲間たちと黒川の皆さんで、一緒になってKUROKAWA WONDERLANDを生み出すことができたんだと思います。

KUROKAWA WONDERLAND

―― KUROKAWA WONDERLANDはどうやってつくったんですか?

簡単に説明すると、まず東京側の映像・音楽・写真・Webデザインなどの職種で、なおかつプロデューサー職だけではない「直接の手を動かす」作り手のクリエイター、たとえば映像チームだとディレクターやメイクさんやカメラマンなどのみんなで黒川に行って、黒川・南小国を巡るツアーを行いました。そのなかで、暮らす人々に直接、さまざまな町の景色・表情を紹介してもらい、自分たちの言葉・言い方で、自分たちの悩みごとをストーリーテリングしてもらったんです。僕たちは、美しい景色を前にしながら、みなさんがどんなことを大切にしているのか、いまの地域についてどう思っているのかといった話を聞いていきました。そのプロセスを経て、まず南小国の伝説をベースにした新たな神話の物語を創造することにしました。そこに1人ひとりのクリエイターの作家性と想いが結びつくことで、この映像をはじめとして、さまざまなクリエイティブコンテンツが生まれたんです。

僕はクリエイターのみんなに、「僕のためとか、黒川のためにという理由で来るならやめてくれ」「自分たちが得をしないならやめてくれ」と再三伝えていました。僕だけでなく、参加した全員が、1人ひとりの勝利のために本気で取り組んだ結果、とてつもなく大きな価値を生み出せたのだと思います。横瀬クリエイティビティー・クラスもまったく一緒で、クリエイターを誘う時は、はじめに「横瀬のためではなく、自分が得をしないのであれば来ないでほしい」とみんなに伝えました。ボランティアは、どうしても「相手のために」というモードになりがちです。でも僕らは、金銭のやり取りがないからこそ、全員が横並びの主役であるインデペンデントプロジェクトを行った。そのためには、「自分のために」が重要なんじゃないでしょうか。

一人ひとりが自分の想いの源泉とつながれる場を用意すれば みんな自然と本気になってくれる

―― 横瀬クリエイティビティー・クラスの話も詳しく聞きたいです。

横瀬クリエイティビティー・クラス」は、埼玉県秩父郡横瀬町を舞台に、都内のクリエイターと中学生を中心とした町民が主体的に関わる場を設け、社会全体で教育への参加を実現したプログラムです。中学校の授業の一環として、住民参加型のクリエイティブ・ハッカソンやキャリア教育授業を行い、最終的には、みんなで映像を制作するフィルム・エデュケーションを実施しました。現在は、その延長線上で、横瀬町の大人たちが、中学生に向けて自分たちの仕事について話す「はたらクラス」が行われています。仕掛け人は、横瀬町役場まち経営課の田端将伸さんです。

横瀬クリエイティビティー・クラス

これもインデペンデントプロジェクトですから、当然、僕が最初に作った企画書には、自分の強い想いが書き綴ってありました。「これまで大きな歯車の末端で手を動かす側の人間であったクリエイティブ/アートの直接の制作者たちが、地域という社会の縮図の中に飛び込み、旧来のクリエイティブの流通の仕組みにおける関係性を超えた、当事者たちとのダイレクトな共創文化や価値作りの実証実験、文化形成がしたい」といったことを並べたんです。つまり、「自分たちは本気でやるつもりがありますけど、横瀬は乗りますか?」と聞いたわけですね。そうしたら、田端さんが「よし、オレは命をかけてこれをやる」と言ってきた。そして、言葉でなく行動で実践してくれた。そうなったら、僕らも本気にならざるを得ないですよね。

―― 横瀬と黒川でどんなことに気づきましたか?

横瀬で改めて確認したことの1つ目は、「フラットな関係性」が大事だということ。クリエイターの課題感と地域の課題感を同じレベルで扱って、お互いにアクションを起こさないと、こういうプロジェクトはうまくいかないんです。たとえば、地域だと、どうしても声の大きい人とか、教育論を語る人とかの存在感が大きくなったりする。僕が作る場では、そういう人たちにはあえて外側から見守っていただき、多くの人がフラットに声を発せられる環境をつくっています。日本の行政の考える公平性とはアプローチが違うのかもしれませんが、そこは僕と地域の担当者が責任を負うカタチで何とか突破しています。

2つ目に大切なことは、「お互いのメリット」をどうやってつくるか、ですね。現実的には、多くの地域にはお金がありません。だから、地域がクリエイターを連れてくるには、お金以外の対価を用意しないと難しい。そういうことを考えずに、自分たちの欲望だけをこちらに押しつけてくる地域とは、付き合うのは難しいと思います。「一緒に創りたい。どうしたら一緒にやれますか?」と聞いてくれる地域であれば、僕らも知恵を絞るでしょう。コンペとかは逆のアプローチですかね。その地域がうまくいっているとかいないとか、そういうのは関係ないんです。偉ぶる気はなくて、ただ本気で求めている人たちと仕事をしたい。地域はその選択肢の一部なのです。優先順位として、低くも高くもない。メリットはお金だけではない、ということは僕が実証してきたことです。

そして3つ目に、「やることは1つ。目的はそれぞれ」という状態をつくった上で、コ・クリエーションすること。目的やメリットは別々でいいけれど、実行することは1つじゃないとならない。ここが少し難しいかもしれません。僕は物語を作る仕事をしているので、その設計にアドバンテージがあるのかもしれません。KUROKAWA WONDERLANDでも横瀬クリエイティビティー・クラスでもそうでしたけど、この仕立てをつくることができれば、プロジェクトがさまざまな有機的な関係性の中で自走していくようになります。クリエイターも地域の人たちも、一人ひとりが自分の想いの源泉とつながって、自分のスキルを足し算で発散できる場を用意すれば、自然と本気になっていきます。

横瀬の場合、最後のほうは、自分の出番が終わったクリエイターがわざわざ時間を空けて、横瀬まで応援に来てくれるようになりました。中学校の校長先生は最初、横瀬クリエイティビティー・クラスに消極的だったのですが、最初のクリエイティブソンを体験してから、全授業・全時間、後ろで見守ってくれて、完成した映像を見たときには泣いてらっしゃいました。大切でかつ難しいのは、できるだけ多くの人がこうやって本気で関われる場をいかにつくるか、だと思います。

本場レベルのPBLを日本で実現したい

―― いまチャレンジしていることはありますか?

正直に言うと、僕は横瀬クリエイティビティー・クラスでも、まだ半分しか満足してないんです。先日、映画にもなったアメリカ・サンディエゴにある100%PBLの公立高校であるHighTech Highを取材してきたんですが、心の底から感動しました。アートと数学や語学などの公教育が見事に融合し、違った趣味趣向、得意分野を持った子どもたちが主体的にクリエイティブなアウトプットに向かっていました。教職員も含め、コ・クリエーションが当たり前の世界がそこにはありました。いまはこの本場レベルのPBLを日本で実現すべく、新たな教育プロジェクトに関わっています。

田村祥宏さん
フィルムディレクター・クリエイティブディレクター。株式会社イグジットフィルム 代表取締役。映像のディレクション、映像を中心としたメディアミックス型コンテンツのクリエイティブディレクションを行う。映画的な演出や、個人としての作家性を大切にしながら、ドキュメンタリーの現場で培った技術により、映像制作の全工程をワンストップで行う。また映像やWEB、音楽や写真など、様々なクリエイティブコンテンツの持つ価値を、企業や社会の課題解決にうまく組み込めないかという挑戦をしている。国内外のアワード受賞多数。

 

「問題になる前」に取り組んで、世の中の「生きにくさ」を減らしたい――「夢のワーク」と「コクリ!研究合宿」

 

2018年6月の「コクリ!研究合宿@フフ山梨」を経て、なおこさんは、問題になる前に挑戦しないと、世の中の生きにくさを減らすことはできないことに気づいて「家族計画建築」を思いつき、「家と家族についてのラーニングコミュニティ」を立ち上げることを決心しました。

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