• 2019/10/22
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関係人口を増やそうと計画すること自体が落とし穴では――関係人口インタビュー(5)齋藤潤一さん

「コクリ!的関係人口」を考えたい! 私たちはそう思って、宮崎県新富町を元気にしている「こゆ財団」の齋藤潤一さんに、関係人口について詳しく伺いました。

「コクリ!的関係人口」を考えたい! そのためにはまず、関係人口を深く考える皆さんにお話を伺おう。そうして、私たちは「関係人口インタビュージャーニー」を始めました。第5弾は、宮崎県新富町の地域商社「こゆ財団」の代表理事として、新富町をどんどん元気にしているじゅんさん(齋藤潤一さん)にお話を伺いました。 ※インタビュー:三田愛

〈コクリ!をご存じない皆さんへ〉

コクリ!プロジェクトとは何か? なぜ私たちが共創型関係人口を考えているのか?

ごく簡単に言うと、コクリ!プロジェクトは、コ・クリエーション(共創)プロセスを使って、地域や社会に「大転換」を起こそうとする取り組みです。コ・クリエーションプロセスでは、自分や仲間の「根っこ」とつながること、そして自己変容を重視します。参加者全員が対等な関係性で、仲間とともに、恐れを超えて未知に踏み出し、自分を変えていきます。自身の身体の声に耳を傾ける身体ワークや、自分を巡る大きな環に想いを馳せるワークなどを通じて、集合的無意識のなかに次の時代のうねりを感じ、自分たちが信じる世界を体現していくのです。その結果、コ・クリエーションでは、単なるコラボレーションとはまったく違う成果が出てきます。地域や社会に「想定外の変容」が起こるのです。コクリ!プロジェクトは、さまざまな場にコ・クリエーションを起こすことで、地域や社会を大きく変えようと試みています。なお、もっと詳しいことはこれらの記事に書いてあります。

私(三田愛)が地域で活動を始めたのは2011年ですが、そのとき私は、深く関わった熊本県南小国町で「第二町民」の創出に関わりました。また同時期に、やはりコクリ!と深い関わりがある島根県の海士町、長野県の小布施町にも第二町民が増えてきました。第二町民というのは、最近「関係人口」と呼ばれている人たちとほぼ一緒です。つまり、コクリ!では、2011年頃から関係人口の創出に携わってきたのです。その私たちから見ると、関係人口には大きな可能性を感じる一方で、不安や危惧も感じています。特に心配しているのは、関係人口と名付けられる前からあった大切なものや想いが損なわれることです。

その不安や危惧を振り払い、「良い関係人口づくりとは何か?」「共創型関係人口とは何か?」をもっと深く考えたい。そう思って、専門家のお二人に続き、地域側の3人にお話を伺いました。地域側3人目は、宮崎県新富町の地域商社「こゆ財団」の代表理事として、新富町をどんどん元気にしているじゅんさん(齋藤潤一さん)です。

まちのみんなが楽しんで「幸福の熱量」を高めた結果 関係人口が増えてきた

―― じゅんさんは関係人口についてどう思っているんですか?

結論から言うと、何の意識もしていないです。去年(2018年)の暮れから関係人口の視察が多いんですけど、少なくとも僕は、関係人口を増やそうなんて全然考えてません。

じゅんさん(齋藤潤一さん)

そもそも、関係人口づくりって、意図的にやってうまくいくことじゃないと思います。こゆ財団やまちのみんなが、地域外の人たちと一緒になって、やりたいことを楽しくやった結果として関係人口が増えているだけ。本当にそれだけなんです。

たとえば、僕たちが毎月開催している「こゆ朝市・こゆ夜市」は、スタッフや出店者のみんなが楽しむことで人が人を呼び、いまでは毎回およそ30店舗が出店し、500名もの方々が来てくれるまでになりました。そして、地域外の皆さんと地域の皆さんが関係を紡ぎ出す場、テストマーケティングの場、企業研修の場にもなり、指出さんには「すばらしい関係案内所だ」と褒めていただけました。これは全部、参加者が楽しんだ結果でしかありません。大事なのは、参加する皆さんが楽しむことで「幸福の熱量」を高めること。その先に共感が広がっていき、最終的に関係人口が増えていく。そういうシンプルな流れがあるだけです。

こゆ財団 こゆ朝市

僕が気をつけていることがあるとすれば、「みんなが楽しめる余白を生み出すこと」です。そのために、こゆ財団のメンバーには大きな権限を移譲しています。移譲というより、ほぼ完全に権限を手放していますね。メンバーを信じて、一人ひとりに任せているんです。

僕はいつも、「自分がワクワクすることなら、自由にやっていいよ」と言っている。僕がアイデアを出すときも、「こんなことに挑戦したいと思うんだけど」とみんなに問いかけて、「やります!」と手を挙げたメンバーに任せています。そうすれば、あとは多様なメンバーがいろんなことにチャレンジして、地域外の人たちを呼び込み、アメーバ状に関係人口を増やしていってくれるんです。そんな感じですから、もはや僕だけでは、新富町の関係人口の全貌は見えません。でも、それでいいと思っています。

―― 関係人口を増やそうとしないほうがいいんですか?

というか、関係人口を意図的に増やそうと計画すること自体が、落とし穴ではないでしょうか。予算ありきでイベントの企画を練ったり、みんなでゴールを共有したり、広報施策に手間ひまをかけたりしても、あまり効果はないと思います。だって、何よりも人を惹きつけるのは、「幸福の熱量」なんですから。何度も言いますが、関係人口を増やしたいなら、みんなが楽しんで幸福の熱量を上げる以上の手はありません。

―― 移住についてはどう考えてますか?

まったく意識してないですね。そもそも僕自身が新富町に住んでない(笑)。新富町のことを好きになって、少しでも関わってくれる人が増えたら嬉しい。その想いだけです。

―― 役場は関係人口についてどう言っているんですか?

町長や役場の皆さんは「町民の声に耳を傾けながら、こゆ財団にしかできないことを推進してほしい」と言ってくれています。だからこそ、僕たちは役場と役割分担をしながら、地域と外をつなげる活動ができる。本当にありがたいことです。

「根っこでつながった」ことの信頼性や価値は本当に大きい

―― コクリ!メンバーは新富町にどう関わっていますか?

やっぱり2018年7月にコクリ!新富町を開催したことが大きくて、その後にたじさん(但馬武さん・fascinate代表取締役)が役員研修・社員研修を引き受けてくれたり、こみーさん(小宮山利恵子さん・リクルート次世代教育研究院院長)と一緒に「しんとみ教育まちづくり」プロジェクトに取り組んでいたり、ゆかさん(島田由香さん・ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 取締役人事総務本部長)と一緒にTeam WAA!(※)の「コWAAキングスペース」を新富町にオープンし、働き方改革の実証実験を行ったりしています。 ※Team WAA!/誰もがいきいきと自分らしく働き、豊かな人生を送れるような「新しい働き方」に共感し、実現していこうとする、企業・団体・個人のネットワーク

コクリ!新富町の様子

そう言えばこの前、こみーさんと一緒にいたときに、たまたま新富ライチを作っている農家の森哲也さんと出会ったんですよ。2人はコクリ!新富町ですでに知り合った仲です。実は、こみーさんがちょうど新富ライチのふるさと納税を寄付したところで、森さんが「昨日発送しましたよ」と教えてくれたんです。当然、こみーさんは嬉しいですよね。一方の森さんは森さんで、「こうやって都会からどんどん人が来てくれるのは本当に嬉しい。夢にも思わなかった」と言うんです。2人とも、偶然出会ったことでワクワクがさらに大きくなった。こゆ財団では、日々こんな感じのことがどこかで起こっています。こういう出会いが、また次の関係を生み出していく原動力になるんです。実際、こみーさんやゆかさんは、何人もの友人を新富町に連れてきてくれている。森さんや地域のみんなも、彼らと会うのを楽しみにしています。

コクリ!新富町で、参加者が森哲也さんのライチ農園を訪れたときの様子(中央が森さん)

ちなみに、こみーさんは、「新富町のメンバーが面白い」とよく言ってくれますね。一人ひとり違うのだけれど、みんなやる気があって、新しいことをやり始めている、とポジティブに見てくれています。

―― コクリ!新富町は何が良かったんだと思いますか?

幸福の熱量のほかに、もう1つキーワードを上げるとしたら、それは「根っこでつながる」です。僕は、根っこでつながることが、コクリ!の真髄じゃないかと思っています。というのは、「コクリ!で出会った」「根っこでつながった」ということの信頼性や価値が、本当に大きいんですよ。実際、僕やこゆ財団の仲間たちが、こみーさんともゆかさんともお互いに根っこでつながっているからこそ、一緒に取り組めているんです。

根っこでつながるコクリ!メンバーとは あっという間にコ・クリエーションが始まる

―― 「根っこでつながる」というのは、具体的にどういうことだと考えてますか?

お互いの願いや夢を知っていることですね。願いや夢を知っていると、僕たちが「これをやりたいな」と思ったとき、「あの人なら一緒にコ・クリエーションしてくれそう」とすぐにピンと来る。これは大きなことです。別の言い方をすると、「人と人として向き合うことができている」ってことでしょうね。人と人として向き合った結果、願いや夢にお互いが共感できれば、その共感できる部分でコ・クリエーションできるんです。

あと、こみーさんともゆかさんともそうですけど、お互いに影響を受け会う関係、お互いに考え方や姿勢を学びあう関係になっています。これも、コクリ!発の根っこでつながる関係人口の特徴かもしれません。一方的に教えてもらうわけでも、こちらが何かを全面的に提供するわけでもなく、お互いの姿から何かを感じて、自分を変えつづける関係になれるんです。

だから、コクリ!で出会った方は全般的に話が早い。お互いに人となりがわかっているし、コクリ!参加者は「まずやってみよう」精神の強い方ばかりなので、あっという間にコ・クリエーションが始まります。世の中、そうじゃないケースが多いですから、コクリ!の存在感は際立っています。日頃、コクリ!新富町に参加したみんなと世間話をすると、「コクリ!新富町、また来ないかな~」という話題によくなりますよ。みんな、ああいう場を欲しています。

僕たちは根っこでつながる効果をよく知っているので、最近はあらゆるシーンで、いろんな人と根っこでつながる工夫をしています。自分たちでコクリ!を開催するのは難しいけれど、根っこでつながるだけなら、対話やストーリーテリングを持ち込めば可能ですからね。たとえば、最近こゆ朝市では、対話や小さなストーリーテリングがよく起こっていて、あそこは根っこでつながる場になりつつあります。また、昨年から視察を有料にしたんですよ。そうしたら、私たちと一緒に何かしたいと本気で考える方々がやってくるようになった。僕たちは彼らとも、根っこでつながろうとしています。

最近は、根っこでつながらない関係人口には、あまり意味がないんじゃないかと感じるくらいです。お互いの願いや夢を知ることには、それくらい大きな価値があると思います。

齋藤潤一さん
1979年大阪府生まれ。米国シリコンバレーのITベンチャーでブランディング・マーケティング責任者として従事。帰国後2011年の東日本大震災を機に、「ソーシャルビジネスで地域課題を解決する」を使命に活動を開始。持続可能な地域づくりの実現を目指して、全国各地の起業家育成に携わる。2017年4月新富町役場が設立した地域商社「こゆ財団」の代表理事に就任。2018年12月国の地方創生の優良事例に選定される。テレビ東京「ガイアの夜明け」世界17カ国NHKワールド特集。MBA(経営学修士)/スタンフォード大学 Innovation Masters Series修了。

 

「問題になる前」に取り組んで、世の中の「生きにくさ」を減らしたい――「夢のワーク」と「コクリ!研究合宿」

 

2018年6月の「コクリ!研究合宿@フフ山梨」を経て、なおこさんは、問題になる前に挑戦しないと、世の中の生きにくさを減らすことはできないことに気づいて「家族計画建築」を思いつき、「家と家族についてのラーニングコミュニティ」を立ち上げることを決心しました。

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