• 2019/10/15
  • Edit by HARUMA YONEKAWA
  • Photo by KENICHI AIKAWA etc.

「地域を好きになってもらいたい」が原動力――関係人口インタビュー(4)北里有紀さん

「コクリ!的関係人口」を考えたい! 私たちはそう思って、熊本県南小国町のコ・クリエーションプロジェクトをともに行ってきた北里有紀さん(黒川温泉観光旅館協同組合 前代表理事)に、関係人口について詳しく伺いました。

「コクリ!的関係人口」を考えたい! そのためにはまず、関係人口を深く考える皆さんにお話を伺おう。そうして、私たちは「関係人口インタビュージャーニー」を始めました。第4弾は、熊本県南小国町のコ・クリエーションプロジェクトをともに行ったゆうき(北里有紀さん・黒川温泉観光旅館協同組合 前代表理事)にお話を伺いました。ゆうきは、江戸末期から創業し、肥後細川藩の御用宿をとしての歴史を持つ黒川温泉で一番の老舗宿「御客屋」の御客番でもあり、「“いち黒川”わっしょいプロジェクト」をともに創り上げた親友です。 ※インタビュー:三田愛

〈コクリ!をご存じない皆さんへ〉

コクリ!プロジェクトとは何か? なぜ私たちが共創型関係人口を考えているのか?

ごく簡単に言うと、コクリ!プロジェクトは、コ・クリエーション(共創)プロセスを使って、地域や社会に「大転換」を起こそうとする取り組みです。コ・クリエーションプロセスでは、自分や仲間の「根っこ」とつながること、そして自己変容を重視します。参加者全員が対等な関係性で、仲間とともに、恐れを超えて未知に踏み出し、自分を変えていきます。自身の身体の声に耳を傾ける身体ワークや、自分を巡る大きな環に想いを馳せるワークなどを通じて、集合的無意識のなかに次の時代のうねりを感じ、自分たちが信じる世界を体現していくのです。その結果、コ・クリエーションでは、単なるコラボレーションとはまったく違う成果が出てきます。地域や社会に「想定外の変容」が起こるのです。コクリ!プロジェクトは、さまざまな場にコ・クリエーションを起こすことで、地域や社会を大きく変えようと試みています。なお、もっと詳しいことはこれらの記事に書いてあります。

私(三田愛)が地域で活動を始めたのは2011年ですが、そのとき私は、深く関わった熊本県南小国町で「第二町民」の創出に関わりました。また同時期に、やはりコクリ!と深い関わりがある島根県の海士町、長野県の小布施町にも第二町民が増えてきました。第二町民というのは、最近「関係人口」と呼ばれている人たちとほぼ一緒です。つまり、コクリ!では、2011年頃から関係人口の創出に携わってきたのです。その私たちから見ると、関係人口には大きな可能性を感じる一方で、不安や危惧も感じています。特に心配しているのは、関係人口と名付けられる前からあった大切なものや想いが損なわれることです。

その不安や危惧を振り払い、「良い関係人口づくりとは何か?」「共創型関係人口とは何か?」をもっと深く考えたい。そう思って、専門家のお二人に続き、地域側の3人にお話を伺いました。地域側2人目は、熊本県南小国町のコ・クリエーションプロジェクト「“いち黒川”わっしょいプロジェクト」をともに創り上げたゆうき(北里有紀さん・黒川温泉観光旅館協同組合 代表理事)です。

良い関係人口をつくるのはなかなか大変なこと

―― ゆうきにとって、良い関係人口と悪い関係人口の違いはどこにありますか?

私たちにとって良い関係人口の代表は、やっぱりKUROKAWA WONDERLANDを一緒に創ったやすくん(田村祥宏さん)や野間さん(野間寛貴さん)ですね。付き合いはもう数年になりますけど、良い関係でありつづけています。彼らに共通するのは、黒川と南小国を愛してくれていることと、お金が発生しても発生しなくてもつながれる関係だということ。たとえば先日、野間さんに地域の広報コンサルティングを頼んだんだけれど、黒川・南小国への想いが強いからこそ、厳しいことも言ってくれるし、コンサルティングの前後の活動にも積極的に関わってくれる。本当にありがたい存在です。

ゆうき(北里有紀さん)

ただ、こういう関係をつくるのは難しいですし、ある程度の時間もかかります。正直、2人やKUROKAWA WONDERLANDの制作メンバー、それに第二町民の皆さんを除くと、そういう関係はあまり多くありません。2人の場合は、KUROKAWA WONDERLANDの創作を一緒にチャレンジしたことが大きかった。そのチャレンジの中で、お互いの人となりを知ることができ、遠慮せずに意見を言い合える関係を築くことができました。

KUROKAWA WONDERLAND

こういう良い関係人口をもっと増やしたいという気持ちはあります。なぜなら、地域内の親しい関係のメンバーだけで毎回同じように集まっていると、地域が少しずつ固まって衰退していくからです。外から良い刺激を与えてくれる人が増えることは、私たちにとって嬉しいことなんです。ただ一方で、ある程度仲良くならないと、腹を割って話し合うことはできません。その「仲良くなる」のが難しい。こちらが求めすぎても、相手の要求が強すぎても、良い関係を築けないんです。それに、仕事で少し絡むくらいでは、深い関係になるきっかけを掴めません。良い関係人口をつくりたいとは思いますが、実際につくるのはなかなか大変なことです。

自分たちから地域を好きになってもらう活動を起こさない限り 素晴らしい関係人口は作れない

―― 2人の関係がほかとどう違うのか、もう少し詳しく聞かせてください。

やすくんや野間さんは、「ガチのつながり」なんですよ。この地域に本気で関わってくれる協力者であり、戦友です。どちらが上でどちらが下ということはないですし、向こうから何かを教えてもらうという感じもありません。2人は、私たちとまったく対等の関係で、黒川と南小国の未来を考えてくれます。ここへ泊まりに来て、黒川温泉の経済を活性化させるにはどうしたらいいか、地域全体を良くするにはどうしたらいいか、一緒になって知恵を絞ってくれるんです。でも、だからこそ2人と付き合うのは大変でもあります。こちらの覚悟が問われますから。こちらが本気じゃなければ応えてくれないし、たぶん離れていってしまうでしょう。

南小国の地域メンバー(NPO法人南小国まちづくり研究会「みなりんく」の設立メンバー)

こういう関係を作る原動力は、私たちの「地域を好きになってもらいたい」という想いです。たぶん、私たち黒川や南小国のメンバーが主体になって、自分たち発信で、地域を好きになってもらう活動を起こさない限り、2人のような素晴らしい関係人口は作れないだろうと思います。自分たちが主体的でないと、次につながっていかないんですよ。これまでの経験上、なんとなく取り組んでも、決して良い結果にならないのははっきりしています。「関係人口の数を増やそう」みたいな考え方も、無駄に疲れるだけですね。温泉地にとって経済指標は大事ですけど、関係人口のKPIは特に要らないと思います。お互いの信頼度や関係の深さ、地域への満足度が数値化できるのなら別ですけど。

行政主導でも関係人口を創ることはできる

―― では、行政が主体となって関係人口づくりをするのは難しいんですか?

いや、そんなことはないと思います。実際、2018年に、南小国町の行政が主体となって「南小国観光まちづくりプロジェクト」を行いました。都市のビジネスパーソンやクリエイターとSMO南小国(南小国版DMO)が一緒になって、まちづくりのアイデアを出し、実行していくプロジェクトです。その結果、いくつかの事業が実際に立ち上がり、良い関係人口が生まれています。もちろん、地域側がいろいろと主体的に頑張らないといけませんが、うまくやれば、こうして行政主導でも関係人口を創ることはできます。

SMO南小国

―― 他に、関係人口づくりで注意したほうがいいことが何かありますか?

関係人口に限らないことですが、都市の皆さんと一緒に何かを進めるときには、地域側がしっかりとした「未来ビジョン」を持っておくことが大切だと思います。というのは、何年か前、成功事例と言われていたある地域が、突然失敗してしまうという事件があったんです。私は何が起こったのかが気になって、直接インタビューに伺いました。そのインタビューで受けた印象は、「この人たちは、自分たちの地域では抱えきれないほど大きな夢を描いてしまったんだ」ということでした。お話を伺った限り、この地域の方々も、そこに関わった都市の方々も、間違いなく優秀な皆さんでした。ただ、チャレンジしようとしたことが大きすぎて、途中で倒れてしまったんです。

これは決してひとごとではありません。私の地域にも、どの地域にも起こりうることです。だって、都市の皆さんの提案の中には、魅力的なものが多いですから。それに、危険があるからといって、チャレンジしないのはもっと危険です。自分たちはいま、どのくらいのことなら実現できるのか。それを見極めながら、関係人口の皆さんとともに歩んでいく必要があるんだと思います。

北里有紀さん
歴史の宿 御客屋 7代目御客番。黒川温泉旅館組合前代表理事。21歳で黒川に戻り、家業の旅館の修業を積む。2010年、32歳で有限会社御客屋旅館の代表取締役に就任。2011年、地域づくりの主要組織である黒川温泉旅館組合の理事に初当選。2015年5月より同組合代表理事の職を務める。

 

「問題になる前」に取り組んで、世の中の「生きにくさ」を減らしたい――「夢のワーク」と「コクリ!研究合宿」

 

2018年6月の「コクリ!研究合宿@フフ山梨」を経て、なおこさんは、問題になる前に挑戦しないと、世の中の生きにくさを減らすことはできないことに気づいて「家族計画建築」を思いつき、「家と家族についてのラーニングコミュニティ」を立ち上げることを決心しました。

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