• 2019/07/31

一番大事なのは「まちの幸せ」を目指すこと――関係人口インタビュー(1)指出一正さん

「コクリ!的関係人口」を考えたい! そのためにはまず、関係人口を深く考える皆さんにお話を伺おう。私たちはそう思い、「関係人口インタビュージャーニー」を始めました。第1弾は、2度の関係人口特集が大きな話題になっている雑誌『 […]

「コクリ!的関係人口」を考えたい! そのためにはまず、関係人口を深く考える皆さんにお話を伺おう。私たちはそう思い、「関係人口インタビュージャーニー」を始めました。第1弾は、2度の関係人口特集が大きな話題になっている雑誌『ソトコト』編集長のさっしーさん(指出一正さん)。最も早くから関係人口と関わってきた一人であるさっしーさんに、根掘り葉掘り聞いてきました。 ※インタビュー:三田愛
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※私たちが考える「コ・クリエーション型関係人口」の記事はこちらです!
「コ・クリエーション型関係人口」で、予想だにしない未来を生み出そう!

〈コクリ!をご存じない皆さんへ〉

コクリ!プロジェクトとは何か?
なぜ私たちが共創型関係人口を考えているのか?

ごく簡単に言うと、コクリ!プロジェクトは、コ・クリエーション(共創)プロセスを使って、地域や社会に「大転換」を起こそうとする取り組みです。コ・クリエーションプロセスでは、自分や仲間の「根っこ」とつながること、そして自己変容を重視します。参加者全員が対等な関係性で、仲間とともに、恐れを超えて未知に踏み出し、自分を変えていきます。自身の身体の声に耳を傾ける身体ワークや、自分を巡る大きな環に想いを馳せるワークなどを通じて、集合的無意識のなかに次の時代のうねりを感じ、自分たちが信じる世界を体現していくのです。その結果、コ・クリエーションでは、単なるコラボレーションとはまったく違う成果が出てきます。地域や社会に「想定外の変容」が起こるのです。コクリ!プロジェクトは、さまざまな場にコ・クリエーションを起こすことで、地域や社会を大きく変えようと試みています。なお、もっと詳しいことはこれらの記事に書いてあります。

コクリ!プロジェクトが大切にしている「コクリ!7ヶ条」

私(三田愛)が地域で活動を始めたのは2011年ですが、そのとき私は、深く関わった熊本県南小国町で「第二町民」の創出に関わりました。また同時期に、やはりコクリ!と深い関わりがある島根県の海士町、長野県の小布施町にも第二町民が増えてきました。第二町民というのは、最近「関係人口」と呼ばれている人たちとほぼ一緒です。つまり、コクリ!では、2011年頃から関係人口の創出に携わってきたのです。その私たちから見ると、関係人口には大きな可能性を感じる一方で、不安や危惧も感じています。特に心配しているのは、関係人口と名付けられる前からあった大切なものや想いが損なわれることです。

その不安や危惧を振り払い、「良い関係人口づくりとは何か?」「共創型関係人口とは何か?」をもっと深く考えたい。そう思って、まずは関係人口の専門家である2人、指出さん(さっしーさん)と小田切さんにお話を伺いました。まずは、さっしーさんとの対談をお届けします。

熊本県南小国町に第二町民が集まった「湯のはた花見会」の1シーン

関係人口は名前がつく以前から日本中にあった

―― 指出さんは関係人口とどう関わり始めたんですか?

指出 最初に大事なことに触れておきますが、関係人口は、けっこう前から日本中にあったものです。外の人だけれど、頻繁にまちに来ていて、住人からもまちの一員と認められている人は、昔からそれなりにいたんですね。たとえば、富山の薬売りがそうです。関係人口には、もともとぼんやりとした実体があって、そこに最近、名前がついたわけです。実は、こういう言葉は他にいくつもあります。わかりやすい例を挙げると、「リノベーション」がそうです。リノベーションのようなことは昔からありましたが、特に名前はついていなかった。それを誰かが名づけたことで、一気に広まりました。関係人口もリノベーションも、以前から名前のないまま漠然と存在していて、時代の要請によって名前がつき、はっきり形が見えるようになったものなんです。

さっしーさん(指出一正さん)

先日、憧れの内山節先生とトークイベントでご一緒したんですが、内山先生には「関係人口は、言葉にしないほうがよかった言葉かもしれない」と言われました。言葉にしなければ、きっと今もあわいの中で、注目もされずにぼんやりと存在していたはずです。対して、関係人口が言葉になった今は、良くも悪くも、はっきり目に見えるものになりました。そのおかげで理解が進み、関係人口が増えたことは確かでしょう。ただ一方で、内山先生のおっしゃるとおり、関係人口とそうでないものを分けることには問題もある。たとえば、あとで詳しく話しますが、「関係人口が増えれば地域人口も増える」みたいな誤解を生み出してしまったところがある。名前がついたから良かった、とは一概には言えないと思います。

僕が関係人口と出会った経緯はこうです。僕は釣りが大好きで、それが高じて釣り雑誌やアウトドア雑誌の編集をしていました。今も基本的に、頭の中は魚のことばかりです。それで若い頃から日本の津々浦々に出かけては釣りをしていたんですが、以前は、地域の人の営みにはほとんど興味がありませんでした。そこに川と海と魚があれば、それでよかったんですね。ところが『ソトコト』を始めたら、実は、釣りに通っていた地域にも面白い人たちがたくさんいることが見えてきた。以前は地域という舞台しか見えていなかったんですが、そこで楽しむ演者の皆さんにも気づいたんです。さらに、地域に何度も通ううちに、地域の演者の皆さんと仲良くしている外の人たちと出会うようになってきました。それが関係人口との出会いです。

べっくさん(阿部裕志さん)

―― なぜいま関係人口が注目されているんだと思いますか?

指出 簡単に言うと、地域との関わりの中に何かを見出そうとする都市住民の皆さんが増えているからだと思います。『ソトコト』の流れでお話しすると、2010年12月号に「日本列島移住計画」という特集を組んだところ、大きな反響がありました。その頃は、地域移住が人気だったんです。コクリ!とも縁が深い海士町の阿部裕志さん(べっくさん)のように、攻めの移住をする皆さんが注目されました。ところが数年経つと、地域移住の注目度が下がっていきます。移住したい人は、だいたい移住してしまったからです。その代わりに、2015年頃から関係人口が徐々に注目されるようになった。私たちは、2018年2月号で「関係人口入門」特集を組んだんですが、この号は品切れになるほど売れました。現在は、2019年3月号の「続・関係人口」特集と合わせて、『ソトコト合本・関係人口入門2019年度版』を出しているほどです。

『ソトコト合本・関係人口入門2019年度版』

こうした関係人口特集のメイン読者は誰かと言うと、現在の都市生活にある程度満足しているけれど、一方で不安や不満もあって、どこかで地域とも関係を持ちたいと思っている都市住民の皆さんです。あるいは、自分が住む周囲の人たちともっと深い関係を築きたい、というニーズもありますね。今は若年層にも中高年層にも、そうした想いを持つ方々がとても多いのではないかと感じます。

関係人口がまちに大きなうねりを起こしている例もある

―― 指出さんが知っている関係人口の例をいくつか教えてください。

指出 私たちは2012年頃から、いくつもの地域とタッグを組んで、「関係人口講座」を開いています。島根県の「しまコトアカデミー」、和歌山県田辺市の「たなコトアカデミー」、奈良・奥大和エリアの「奥大和アカデミー」、越前おおのの「みずコトアカデミー」など、現在年間10くらいの講座を開催しています。参加者の多くは都市部の20~30代。都市に暮らしながら、それだけでは物足りないという若者たちですね。最初に彼らの例を2つ紹介します。

和歌山県田辺市の「たなコトアカデミー」は、2018年11月に東京で始めた講座で、2019年に第2期の開催が決まっています。第1期生は、早くも2回、青山ファーマーズマーケットに田辺市のアンテナショップ「おいでらよ いこらよ」を出店しました。東京のたなコトアカデミーメンバーだけで、田辺市の野菜を販売したんですね。もちろん、出店までに何度も田辺市に足を運び、地域の皆さんと話し合ったり、試行錯誤を繰り返したりしています。

たなコトアカデミー

「奥大和アカデミー」は、奈良・奥大和エリアの関係人口を増やす取り組みで、これは名古屋で開催しています。僕が特に面白いと思ったのは、メンバーの女性たちが中心になって、奈良・天川村で「1日スナック」を開いたことです。当日は80名以上のお客さんがやってきました。このスナックはその後も定期的に行われていて、天川村や京都、岡崎、新城、東京の日本橋でも開かれました。日本のいろんなところで、天川村や奥大和エリアのことを話すスナックが立ち上がったんですね。関係人口はこういう広がりも見せています。

関係人口がまちに大きなうねりを起こしている例もあります。福井県鯖江市では、2015年から「RENEW(リニュー)」という国内最大級の産業観光イベントが開催されていますが、これを立ち上げた中心組織は「TSUGI(ツギ)」という会社。TSUGIのメンバーは、「河和田アートキャンプ」をきっかけにして、鯖江市河和田地区と関わるようになりました。河和田アートキャンプとは、2004年の福井豪雨の際、京都精華大学の学生たちが災害支援活動として河和田地区に入ったことから始まった取り組みです。つまり、災害支援から学生たちが鯖江の関係人口となり、最終的には国内最大級の産業観光イベントにまでつながっていったんですね。これなんかは、わかりやすい例です。

おやまちプロジェクト

最近の試みでは、コクリ!メンバーの坂倉杏介先生が関わっている「おやまちプロジェクト」も面白いですね。これは東京都世田谷区の尾山台付近の住民、学校、商店、大学、さまざまな人たちが垣根を越えて集まるチームです。彼らが集まってわかったことは、日々、尾山台の商店街を、たった5分の差で違う人たちが行き交っているということです。ほんのちょっとズレているだけなんですが、彼らは日常的には全然会わないんですね。そうした方々がおやまちプロジェクトで一堂に会したことで、つながりができ、ワイン屋さんが「Barおやまち」を開いたり、「おやまちカレー食堂」が生まれたりしたんです。こうした都市型の関係人口づくりの例も出てきています。

関係人口の数を追求しないこと
移住をゴールにしないこと

―― 指出さんが思う関係人口の「落とし穴」と「ポイント」を教えてください。まずは落とし穴のほうから。

指出 1つ目に大事なのは、「関係人口の数を追うのはNG」だということです。関係人口数が増えれば地域が変わる、というのは明らかな間違いです。関係人口は数よりも質のほうがずっと重要で、たった1人の存在で地域がガラリと変わることが多いんですね。その1人を生み出すために大切なのは、質の追求です。ですから、関係人口を考えるときは、まず数の論理を手放してください。

質を追求するためには、むしろあまり数を増やさないほうがいいと思います。たとえば、手前味噌ですが、私たちの関係人口講座の受講者数は、いずれも10~15名くらいに設定しています。なぜかというと、受講者にとっては、関係人口の数があまり多くないほうが、地域の皆さんと濃密な関係を築きやすくなるからです。10数名くらいだと、彼らは居心地が良いんですね。それよりも多くなると、地域の人たちとの関係の争奪戦が起きかねません。ですから、数を絞って濃い関係をつくっていったほうがうまくいくことが多いんです。

2つ目は、「移住をゴールにしない」ことですね。関係人口というのは、1から99の間を行ったり来たりする人たちで、時期によって関係が濃くなったり薄くなったりするのが普通です。結果的に移住をする人はいますが、それはあくまでも結果論にすぎません。少なくとも最初の時点では、関係人口のほとんどは移住をゴールに置いていないんです。ですから、地域側も移住をゴールにしないのが正しい対応です。関係人口が増えたら地域人口が増える、というのは、完全な勘違い。そこを間違わないようにするのが大切です。

もちろん、関係人口が移住する例はあります。たとえば、被災地訪問から関係を深めて、宮城県気仙沼市唐桑町に移住した「ペンターン女子」の皆さんとか、地域おこし協力隊から入って新潟県十日町の池谷・入山集落という限界集落に移り住んで、そこを「奇跡の集落」にしてしまった多田朋孔さんとか、移住女子の佐藤可奈子さんとか、そういう人たちはいます。いますけど、決して多くはありません。ですから、関係人口が全員そうなんだと思っちゃいけないんです。

3つ目に、関係人口を「ファン・サポーターと捉えない」ことが大事です。ファンやサポーターには当事者意識はあまりありませんが、関係人口には当事者意識がある。ここが大きな違いです。関係人口の多くは、そのまちのことを、まちの人たちと一緒に真剣に考えていく人たちなんです。先ほども取り上げた多田朋孔さんは、まさにその良い例ですね。詳しくは、『奇跡の集落:廃村寸前「限界集落」からの再生』(農山漁村文化協会)を読んでください。これは関係人口のお手本のような事例です。多田さんは、質の高い一人が地域を変えるという意味でも、典型的で素晴らしい関係人口だと思います。

4つ目に、関係人口を「単なる労働力と捉えない」ことも大事です。相手を労働力だと思っていて、良い関係を築けるわけがありませんからね。これについては、多くを語る必要はないでしょう。

5つ目に、これは他の落とし穴とは少し質が違いますが、「あまり類似語を増やしたくない」ということです。たとえば最近、関係人口とほぼ同義語の「つながり人口」「複業人口」という言葉が出てきました。これらの言葉が悪いとは思わないんですが、ただ類義語がどんどん増えることで、関係人口のうねりが小さくなってしまうことは避けたいですね。私は、関係人口があくまでも一般的な用語として広まることを願っています。それが、関係人口を推進する強力な後押しになると思うからです。

「まちの弱み」が関係人口を増やす

―― では、関係人口づくりのポイントは何でしょうか?

指出 結局、一番大事なのは、関係人口づくりによって「まちの幸せ」を目指すことですよ。関係人口は、まちを幸せにしてくれるんですね。関係人口が増えても、地域人口が増えるかどうかはわかりません。ですが、僕が見てきた限り、良い関係人口が増えるほど、まちは幸せになっていく。これは間違いありません。ですから、関係人口づくりはまちの幸せづくりなんだ、と考えることが大事です。僕はもう、これに尽きると思いますね。

こゆ財団

ちょっと違う視点から見ると、まちを最も貧しくするのは、地域の皆さんの「心の過疎」なんです。心の過疎とは、自分の住む地域に魅力を感じなくなり、「この地域には未来がない」「まちの10年後、20年後なんて考えても意味がない」といった風に思ってしまうこと。これが地域を廃れさせる元凶であり、始まりです。心の過疎を防ぐには、まちを出入りする関係人口を作るのが一番なんですね。彼らが出入りすることで、まちは活性化する。その動きが心の過疎を消していくんです。

では、実践的に関係人口を作るためのポイントを順に紹介していきます。1つ目は、地域に「関係案内所」を用意することです。関係案内所とは、地域内外の皆さんの関係を生み出す場。たとえば、コクリ!の皆さんも訪れた宮崎県新富町「こゆ財団」の「こゆ朝市」は、素晴らしい関係案内所だと思います。毎月30以上の出店者と300人以上が集まる場になっていて、こゆ財団の皆さんは、地域外からやって来た人たちをここによく案内しているんですね。すると、そこからつながりができていく。こういう場を用意すると、関係人口は確実に生まれやすくなります。

関係案内所は、観光案内所と比較するとわかりやすいと思います。観光案内所で出会えるのは、地域の観光課の人たちだけ。また、普通の旅で出会えるのは、旅館とかお店とか、観光や地域広報に携わる人たちだけです。関係人口になりたい人たちは、そうじゃなくて、そこの住民の皆さんと直接つながりたいんですね。そのために必要なのが、関係案内所です。地域の住人たちが集っていて、外の人たちが訪問しやすいところ。中の人も外の人も入り混じって使える場所。こゆ朝市は、その条件を見事に満たしています。もちろん、朝市のようなマーケットじゃなくて、実際に集まる場所を作るのもいいでしょう。今は日本中にあまっている建物がたくさんありますから、そういうところをリニューアルすれば、割と簡単に作れるはずです。

2つ目に、地域住民の皆さんの意識を変えることが大切です。地域外から頻繁に地域を訪れる関係人口の皆さんは、「地域の人たちからどう思われているんだろう?」と気にしています。だからこそ、地域の人たちは「彼らは関係人口なんだ」と認識して受け入れ、あまり不思議な目で見ないようにしたほうがいい。ただ、この点はすでに多くの地域で変わってきているので、あまり心配はしていません。

3つ目に、最初にお話ししたとおり、関係人口は昔からあったものですから、すでに地域に存在している可能性もあります。その土壌を活用することで、関係人口を増やしていくのも良い手です。途中で説明した福井県鯖江市の例は、その典型です。福井豪雨をきっかけに河和田アートキャンプという関係人口の土壌が育まれていて、そこからTSUGI(ツギ)が生まれ、RENEW(リニュー)が立ち上がったんです。こうした潜在的な関係人口を地域内に探してみると、意外なところに見つかるかもしれません。

4つ目に、「自発的にまちを発見してもらうこと」が大事です。僕たちの経験では、「友達がまちにハマる」ケースが多いんですよ。そのまちにもともと興味があった人よりも、一緒にやって来た友達のほうが関係人口になるんです。友達に無理やり連れてこられた人が、俄然まちに惹かれるということが本当によくある。面白い現象ですよね。なぜそうしたことが起こるかというと、そのまちの情報を事前にインプットしていないほうが、まちを自発的に発見して楽しめるからだと考えています。ですから、ソトコトの関係人口講座では、できるだけまちの説明をしないようにしています。そのほうが、受講者の発見が多くなるからです。

こゆ朝市の風景

5つ目に、「関わりしろ」をつくることです。関わりしろとは、地域外の人たちが地域に関われる余白のことです。関わりしろの多くは、実は、地域の「弱み」です。たとえば最近、秋田県鹿角市は「このまちには医師が足りません」と公言して、医師をめざす人を応援する企画を始めたりしています。こうやって弱みや問題を正直に話してくれたほうが、外の人は関わりしろを見つけやすくなるんです。ですから、「おらがまち自慢」は逆効果。自慢したって関係人口は作れません。弱みを正直に見せたほうが、外の人には魅力的に写るんです。なぜなら、そこに彼らの関わりしろがあるからです。

もっと言えば、被災地への支援をきっかけに関係人口になるケースがとても多いんですよ。これまでに話してきた事例だと、河和田アートキャンプペンターン女子がそうですよね。実は、そうした例は他にもたくさんあります。そもそも僕は、日本の関係人口元年は2004年だと考えています。その年、日本の国際NGOが、新潟県十日町市などで中越地震の支援活動を始めました。移住女子の佐藤可奈子さんは、まさにその中越地震の復興支援をしていた特定非営利活動法人ジェン(JEN)の農業ボランティアから十日町市に入っています。この年から、国際NGOが災害支援に力を入れ始めたことで、若者たちが日本の地域の関わりしろに気づくようになったんですね。河和田アートキャンプをはじめた京都精華大学の皆さんが、福井豪雨の復興支援を行ったのも2004年。関係人口はその年から増えてきたんです。災害は不幸以外の何物でもありませんが、それは一方で、関係人口の大きな関わりしろでもあるんです。

どの地域にも必ずチャンスが巡ってくる!

―― 最後に、何か読者の皆さんにメッセージをいただけると嬉しいです。

指出 僕はこれまで20数年にわたって、日本中の地域を見続けてきました。それでわかったのは、「順番は必ず回ってくる」ということです。もしかすると、「うちのまちには、関係人口のブームなんて来ないよ」と諦めている方がいるかもしれませんが、それは違う。そのうち必ず、チャンスが巡ってきますから、焦ることはありません。ただ、そのときにチャンスをぐっと掴めるかどうかは地域次第であることも、また間違いのないこと。そのとき、今お話しした落とし穴とポイントをぜひ役立てていただけたらと思います。

愛の編集後記
さっしーさんとの対談は本当に充実した時間で、何よりもさっしーさんの愛を感じました。地域の人を愛する気持ち、関わる人を大切に思い、信頼する気持ち…。地域を愛し、25地域を定点観測されている(長いところは27年!)ことから来るものすごい情報量、俯瞰することでみえてくる潮流など、本当にさすがだなぁ・・・!と、ほれぼれしながら伺いました。また、私たちがコ・クリエーションを実証研究する中で大事にしてきた「関係性」の観点で共感する点、関係人口ブームへの懸念といった共通点も数多くありました。私たちが、地域や日本の未来を美しく変化・進化させるためになくてはならないポイントを「共創型(コ・クリエーション型)関係人口」として整理し、発信していく意義を改めて感じました。

指出一正(さしで・かずまさ)
月刊『ソトコト』編集長。1969年群馬県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業。雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現職。島根県「しまコトアカデミー」メイン講師、静岡県「『地域のお店』デザイン表彰」審査委員長、奈良県「奥大和アカデミー」メイン講師、奈良県下北山村「奈良・下北山 むらコトアカデミー」メイン講師、福井県大野市「越前おおの みずコトアカデミー」メイン講師、和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」メイン講師、高知県・津野町「地域の編集学校 四万十川源流点校」メイン講師、岡山県真庭市政策アドバイザーをはじめ、地域のプロジェクトに多く携わる。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「わくわく地方生活実現会議」委員。内閣官房「水循環の推進に関する有識者会議」委員。環境省「SDGs人材育成研修事業検討委員会」委員。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「人材組織の育成・関係人口に関する検討会」委員。国土交通省「ライフスタイルの多様化等に関する懇談会」委員。著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)。趣味はフライフィッシング。
www.sotokoto-online.jp

 

「問題になる前」に取り組んで、世の中の「生きにくさ」を減らしたい――「夢のワーク」と「コクリ!研究合宿」

 

2018年6月の「コクリ!研究合宿@フフ山梨」を経て、なおこさんは、問題になる前に挑戦しないと、世の中の生きにくさを減らすことはできないことに気づいて「家族計画建築」を思いつき、「家と家族についてのラーニングコミュニティ」を立ち上げることを決心しました。

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